#01
JUNE 2020
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PEOPLE

STAY SALTY ...... people here

還る。

The importance and love of seeing, listening, and feeling

6.1 2020

 

planner / producer  新谷佐知子

Sachiko Shintani

見て、聞いて、感じることの

大切さと愛しさを

5月のある日、自転車で

あれはゴールデンウィーク明けすぐだったかな。

緊急事態宣言が出てから1ヶ月、ずっと家と徒歩2分のところにある事務所を静かに往復する毎日を続けていた。

おまけにアレルギー性鼻炎のようなものにかかってしまい、咳が止まらず体調もずっと低空飛行で不安を何重にも纏ったような日々が続いていた。

家で過ごす時間が長くなってまず気づいたのは床の汚れ。

3年前にプロの大工さんが講師になって、姉や友人とDIYで自宅のリビングの床を一新したのだが、そのまま何の手入れもせず放置して薄汚れていたのだ。

綺麗にするなら今しかないと一念発起して床の汚れを拭い、そこへオイルを刷り込み、乾かしてまた刷り込むという工程を丸四日間ストイックに続けていた。母以外、誰にも会っていなかった。

そんなある日、義理の兄が自転車を貸してくれた。

「公園で待ち合わせしようよ!きっと気持ちいいよ」という姉の誘いに恐る恐る乗って、兄の電動自転車を借りて恵比寿から中目黒公園までひとっ走り。

5月の光が気持ちよくて、心地よい風を感じながら新緑まばゆい公園についた時、突然自分の輪郭がふわっと広がったような感覚になった。

木々や土の匂い、風の感触、光の移ろい。

あ、私ここんとこずっと、閉じてたな。狭いところにいたな。

自粛生活の中でもそれなりにアクティブに生きているつもりでいたけれど、完全に縮こまっていた。

は〜。なんて気持ちいいんだろう〜!

自転車ありがとう! 公園ありがとう! 5月最高! って思った。

おまけに2ヶ月ぶりに姪っ子にも会えて(ソーシャルディスタンスしながらね)、ちょっと泣きそうになった。

半分閉じていた瞼がパチッと開いて、久々に深呼吸。

 

先週見たNHKの「日曜美術館」で、95歳になる染色作家の柚木沙弥郎さんが

「閉じてしまわないで。心持ちを開いて」とおっしゃっていた。

柚木沙弥郎さんはご高齢の不自由な体を精一杯使って、「いのちの樹」という自分の背丈よりも大きい新作の下絵描きに取り組んでいた。モノクロの右に左に伸びる枝、太い幹の形。なんと力強い絵なんだろう。生命力溢れる形に、画面越しにもハッとした。なんか自分の、この小さく閉じた状態が恥ずかしくなってしまった。

そうか。そうなんだ。閉じちゃダメなんだって。

どんな時も、心持ちを開け!って。

この言葉を忘れちゃダメだと思って、近くにあった紙に急いで「心持ちをひらく」って書いた。

それだ。

 

 

ここでちょっと自己紹介させてください。

私は、いろんなジャンルのアーティストと一緒に物作りをしたり、ワークショップや展示の企画をする仕事をしています。いつもうまく説明できないんですが、その全部をひっくるめて「アートマネージメント」って呼んでいます。

この自粛期間中、時間だけはたっぷりありましたよね。

世界が一時停止ボタンを押されている前代未聞な状況下で、「自分がやりたいことってなんだろう、大事にしたいことって?」と自問する時間を過ごしていたような気がします。

これから世界がどう変わったとしても、大事にしたいことはなんなんだい、さちこよ。

それが私への問いかけでした。

それで、ここにきてなるほどなあと見えてきた。

自転車で公園に行った時の、ひとまわりもふた周りも自分自身が広がる感覚や、染色作家の柚木沙弥郎さんが描いていた「いのちの樹」。

大事なのは、「心持ちをひらく」というようなこと。

 

五感をひらく場を作りたい

思えば、私はずっと前から感覚をひらくことに興味を持っていたなあと思います。

2年前、岡山県にある奈義町現代美術館で子どもたちのためのアートの1日を企画しました。

その名も「なぎこどもアートデイ」。

奈義町現代美術館は作品と建物とが半永久的に一体化した美術館です。太陽、月、大地と名付けられた3つの展示室から構成された、日本でも珍しい「体感型の美術館」と言ってもいいかもしれません。

「なぎこどもアートデイ」は、この美術館で現代美術家や作曲家、装丁家やパフォーマーが子どもたちに向けて五感を使って楽しむワークショップを開催するというものでした。

 

 

現代美術家のシェリンさんは「ふしぎティーパーティー」というワークショップを開催。

参加した子どもたちと一緒に青いケーキを作って食べるプログラムで、見た目と味のズレの面白さに触れてもらう企画でした。これは子どもたちにとって新鮮な体験だったようです。

装丁家でアーティストの矢萩多聞さんは、美術館の常設作品「月」と「太陽」を体験した後に大きな絵を描くというワークショップを開きました。なだらかな坂になった芝生の上で自分の体よりも大きな絵を描く。身体全体を使って、表現する時間です。

作曲家の宮内靖乃さんのワークショップは、「月」の作品空間で子どもたちの声の響きを使って「月夜の森」を奏でるというものでした。子どもたちは、どのワークショップも楽しそうに生き生きと過ごしていました。

身体の感覚をぜんぶ使って、自由に作り、奏で、感じる時間になっていたらいいなあと思います。

 

五感つながりでもう一つ。

2013年に恵比寿ガーデンプレイスで行われた展示で、「香りの温室」という作品です。

香りの温室

 

 

アロマセラピストの和田文緒さんを中心に、デザイナー、作家、音楽家が集って香りの森のような場所を作りました。訪れた人は、様々な植物の香りを思い思いに体験します。

小さな家の形をした蚊帳のような中に入ると、5つの薬瓶や小瓶が並んでいます。

そこにはタイトルと詩が添えてあって、その詩から想起された5つの香りを体験できるようになっているというものでした。

一つの瓶からは、音も聴くことができました。「雨上がりの光の梯子」という瓶です。

体験した人からは、「忘れていた古い記憶を思い出しました」とか「温かい色が見えた」とかいろんな感想がありました。

普段は眠っているその人独自の記憶や感覚を呼び起こすような、香りと言葉、音で感じる作品です。

****

 

作品と出会う、山小屋という二坪だけのギャラリー

最後にもう一つ。

家族で運営している小さなギャラリーを紹介させてください。

その名も「山小屋」というのですが、恵比寿の街で、いや多分東京で一番小さなギャラリーだと思います。

訪れる人がちょっと一休みする峠の茶屋のような存在になりたくて、そんな名前をつけました。

2012年にオープンして、もう8年目になります。

有名無名問わず、私たちがいいなあと思うアーティストの作品をここで発信しています。

山小屋企画展「Strawberry Fields Yusuke Sato」

 

 

「山小屋」で展示を企画していてよく立ち会うのが、初めて作品を買うというシーンです。

普段展示を見ることがあんまりないという人も、作品やアーティストと出会って、話して、山小屋で過ごすことで、何かが変わる。

作品の世界観に触れることで、作品と一緒に暮らしてみたいと思うんだと思います。

私はこの「初めて作品を買う」という行為は、その人の中にある新しい扉を開けることなんじゃないかなと思っています。

作品は、ただ美術館やギャラリーで眺めるだけの存在じゃなくて、その人の家のリビングや寝室で、一緒に暮らす存在にもなり得るということ。

そう気付いた時、「作品を遠くで見る」から、「作品と暮らしながら見る」へ劇的に変わる瞬間が訪れる。作品は、見る人がいて初めて息づくものなのです。

見る人は、作品から日々何かを受け取る。

それは想像力というものなのかもしれないし、自分の中の創造性にスイッチを入れることなのかもしれません。

面白いのは、四季折々、自分がどんな精神状態か、例えば疲れているのか、心身ともに充実しているのかで作品から受け取る印象も変わります。

半年間ずっと壁にかけていて、毎日目にしていたとしても、ある日突然、作品の中に潜んでいた小さな窓や鳥のモチーフに気づいてハッとするなんていうことも。

なぜ今まで気づかなかったんだろう、そうか!…と、同じ作品がある日を境に違って見えることもあります。

作品は、その人の毎日にそっと寄り添い、時にエネルギーを送ってくれて、時に心を鎮めてもくれるのです。

そう、作品は、その人の心を動かして、日々の暮らしに新しい風を吹かせてくれる存在。

一度開けたら、ワクワクして仕方ない。

作品を買うとは、そういうことなんだと思います。

その人の感性の扉をひらいてくれる。

作品との応答を楽しむこと。

山小屋が、そんな扉を開けるきっかけを作れているなら、これ以上嬉しいことはありません。

 

見て、聞いて、感じることの大切さと愛しさを

コロナがいつ終息するのかは、誰にもわかりませんよね。

これからまだ2年か3年か、コロナありきの世界でなんとか工夫しながら生きて行くしかないのかも。

これから先、オンラインでの勉強会やワークショップ、オンライン個展や音楽祭なんかもまだまだ増えていくかもしれない。

私がこれまで企画して来たことは全て、その場に集まって、見て、聞いて、感じてこそできる体験でした。

集うこと、同じ空間で体験することが難しくなった中でも、なんとか、この見て聞いて触れて感じることで生まれる感覚を大事にして行きたいと思うんです。

それは遠く離れた人にアート作品を届けることかもしれないし、自宅で香りや音や物語を体験してもらう仕掛け作りなのかもしれない。

世界がどんな風に変わったとしても、届け方を試行錯誤しながらでも、大事なことは変わらない。

あなたはそこにいて、私はここにいる。

今日も明日も、心持ちを開いて、新鮮な風を取り込んで、お互いのいのちの木があっちにもこっちにも自由に伸びてくれるように、やってみるしかない、そう思います。

 

(と言いつつ、早く山小屋でぎゅうぎゅうになって乾杯できる日が戻りますように!と心から願いつつ!)

text - Sachiko Shintani

photographs - Nagi Kodomo Art Day:Katsuhiro Ichikawa
                        Kaori no Onshitsu:Jun Sanbonmatsu
                        Strawberry Fields Exhibition:Yusuke Sato

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みんなの声で「月夜の森」をつむいでみよう
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photograph by Mioko Takano

planner / producer

新谷佐知子

Sachiko Shintani

1976年生まれ。1999年東京造形大学卒業後、2000年にMOVE Art Managementを創業。展覧会やイベント、グラフィックなどの企画・プロデュースを行う。2012年、東京・恵比寿にgallery and shop 山小屋をオープンし、様々な展示を企画。五感、記憶、劇場をテーマした体験型、参加型の作品制作を行う。

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アート・マネージメント『MOVE Art Management』

「心が動く」をキーワードに、デザイナーや写真家、映像作家に音楽家など様々なジャンルのクリエイターとともに、デザインや編集のディレクション、

展覧会やワークショップの企画を行うアートマネジメントの会社です。

<主なプロジェクト>
2010年   Paris 59 Rivoli 企画展「夜の庭」キュレーション
2011年〜  「恵比寿文化祭」メインビジュアル制作
2012年〜  「gallery and shop 山小屋」企画、運営
2013年   「香りの温室」展示企画
2014年     「渋谷ズンチャカ!」のネーミング及びコンセプト、メインビジュアル制作
2015年          恵比寿文化祭「舞台の上のティーパーティー」企画
2018年     奈義町現代美術館「なぎこどもアートデイ」企画

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作品と暮らす風景

ギャラリー『gallery and shop 山小屋』

東京・恵比寿駅からほど近くにある、ちいさな、ちいさなお店です。
扱う作品は時期によって色々ですが、日々の暮らしにふわりと風を吹かせてくれるアート作品や器、本や香りの品々です。
忙しい恵比寿の交差点に「山小屋」という名前は少し不思議ですが、ぶらり訪れて知らない方同士が偶然に出会ったり、素敵な風景を一緒に見たりできたら、という気持ちで名づけました。


*現在は、コロナ情勢に伴う移動自粛要請などの事情で

 一次休業となっております。

 年に4〜5本の山小屋による企画展と、それ以外の空いている期間は、

 作家さんへスペースの貸し出しも行っています。詳細は下記へ。
 


山小屋が企画制作したアートブックや、アーティストのグッズを販売しています。詳細は以下へ。

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Yusuke Sato  strawberry fields
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PEOPLE

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My story about wine

ワインにまつわる私の話

6.1 2020

wine stylist  大野明日香

Asuka Ohno

ワインスタイリストって何?

名乗り始めた最初の頃、からかい半分に沢山の人から聞かれたものだった。

ワインの勉強がてらバーで3年修行して独立することになった時、最初に企画したイベントは「ワイン10」という、10本のワインにそれぞれ10のアート作品があり、見にきたお客さんはなんのワインかは知らずに、アートをみながらワインを飲む、そこでアートとワインをセットで感じてもらう。というもの。我ながら面白い企画だったと思います。笑

そのイベントに来てくださったある方が、「あなたを紹介するのに肩書きがあった方がいいわ」ということでつけてくださったのが、「ワインスタイリスト」。

自分でも最初はこっぱずかしい気持ち満載でもじもじしていたが、オーダーされたパーティーやイベント、人に「似合う」ワインをセレクトする。

仕事として名乗るうちにまさに私がやりたかったことは、ワインスタイリストそのものだなと思うようになっていったのは、なんとも不思議なものだなと思った。

3年私が修行したそのワインバーは、常時グラスワインで100種類出しているという珍しい店で、全くワインの知識がなかった私は1からその店でワインについて教わった。

深夜3時に営業が終わってから学ぶワインの授業。

様々な品種を試飲していく、カジュアルな価格帯のもの、グランヴァンと呼ばれるような高級ワイン、そして「自然派ワイン」と呼ばれるワインの世界と出会ったとき、仕事として私が選ぶなら、この色んな意味で癖の強いワインがメインでやりたい。もっとワインを知りたい。勉強したい。

でも私が知りたいと思っていることはいわゆる「ソムリエ」とは違うことなんじゃないか。

どうしても私は知識としてのシャトー名であったり、格付けであったりという、ソムリエになるためには必要不可欠なジャンルに興味を抱けず、「ワインを作る人」にばかり興味がいき、仕事でワイナリーさんに会いに行くという人がいれば、運転手役をかってでて連れて行ってもらうようになっていった。それが「日本ワイン」と出会った始めの一歩になりました。

 

日本ワインとは、日本で栽培した葡萄のみをつかって日本で醸造しているワインのこと。

そうしたワイナリーさんを訪れていくうちに、私は大手のワイナリーさんで作られるしっかりとして安定した味わいのワインよりも、つくっている人の人間性なのか、その土地の個性なのか、どこか「ゆらぎ」のようなものが感じられるワインに強く惹かれていき、それはやはり「自然派ワイン」の世界観であると気づいた。

 

今やすっかり定着した呼び名となった自然派ワインの定義は様々だけど、1番大きな特徴は、つくり手自らの自然に思える作り方をする、ということだと私は理解している。

 

独立してから早くも4年たち、私はいま、自分が選ぶワインのジャンルを「オルタナティヴワイン」と名付けた。

音楽のジャンルでよく聞くオルタナティヴという言葉の意味は「時代の流れにとらわれない普遍的な精神」。

流行でもなく、誰かが決めた決まりでもなく、かといえ自分自身の偏愛でもなく、ただいつかどこかへ流れ着くためのぶれない精神。

そこには良きものを目指して進む時間を感じる。

私が選ぶワインは自然派ワインにも、日本ワインにも、グランヴァンにもとらわれない。

ただ私が感じる何かに忠実だ。

 

そんななか、世界はコロナウィルスによって一変した。

私自身、全ての予定していたイベントは無くなり、手伝っていた飲食店も休業、テイクアウト中心になり、今現在外出自粛が解かれても出勤はできない。

乾杯も、くだらない会話も、下世話な冗談も、熱い討論も、甘い抱擁も姿を消した世界で、私に何ができるのだろう?と考えた。

snsで繋がる飲食店関係者、ワインを作る人、誰もが途方にくれている、それならば今まで直接会って、繋がって仕事をしてきたワインを生業にするプロフェッショナル達から、お客様に向けて、ワインを作る人達をsnsで紹介できないだろうかと考えた。

以前から、「作る人」に比べて「紹介する人」の個性はなかなか注目されないが、実は紹介する人の個性でワインは味わいが全く異なることが面白いと思っていたので、同じフォーマットの中でリレー形式で繋いでいけば偏りなくワイナリーを紹介できるし、紹介の仕方、セレクトの仕方の違いも際立つと思った。

結果総勢45名の豪華な顔ぶれの「日本ワインリレー」となった。

心から感謝です。ありがとうございました。

45人が選んだワインはジャンルも様々で、もちろん自然派ワインではないものもたくさんあったけれども、この時代の中で飲んでほしいと選ばれたワインはまさに、「オルタナティヴワイン」と言えるのじゃないかしら。私はそう思いました。

「ワインの恋文」という連載をさせてもらっているウェブマガジンGOTTA webで「日本ワインリレー」をまとめてもらうことになったのでそちらで是非読んでみてください。

 

この先、どんなふうになっていくのか私自身も世界も全くわからないけれど、ワインに導かれて出会ったり繋がったりしてきた人達や、音楽、テレビの仕事で出会った人達と、また重なり合う時間をつくっていけたらいい。

それが誰かのなにかのちょっとした救いになることを願って仕事していく。

文章なのかな、イベントなのかな、スナック明日香をまたどこかでやりたいとも思ってるし、わからないけど優しい時間を過ごしたいですね。

一緒に、ダンスを踊るみたいに、軽やかに楽しく、無責任でとるにたらない会話をしましょう、ワインと共に、いつかの夜に。

 

text - Asuka Ohno

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wine stylist

大野明日香

Asuka Ohno

島根県松江市出身。日本のワイン、ヴァンナチュールを中心に扱うワインスタイリスト。映像、音楽関連の仕事を経て、いくつかのワインバーに勤務後、ワイン スタイリストとして独立。ワイン関連のイベントの主催やプロデュース、ケータリングなどを行う。「日本ワインと手仕事の旅」(光文社)沼津の雑貨店halの店主 後藤由紀子さんとの共著がある。

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書籍『日本ワインと手仕事の旅』

2018年9月、書籍『日本ワインと手仕事の旅』が出版されました。
これは、静岡県沼津市にあるセレクトショップ〈hal〉店主の後藤由紀子さんと
ワインスタイリストの大野明日香さんが日本各地を旅して、
お薦めのワイナリーと手仕事を紹介する本。

著者:後藤由紀子、大野明日香

制作:委員会

判型:A5判ソフト

定価:1400円(税抜)

発行所:光文社

発行:2018年9月20日

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6.1 2020

PEOPLE

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Sun Distance

太陽のディスタンス

b ookstore landlord   熊谷聡子

Satoko Kumagai

京都の伏見の南の端の方、京都市内だけど、いわゆる「そうだ 京都、行こう」でイメージする京都からは結構な距離があるし、駅からも距離があるし、距離なら間に合ってますっていうくらい距離はあるんです。

そういう場所で、2018年の2月15日に絵本専門店「絵本のこたち」をオープンしました。

築75年の古民家を改装し、靴を脱いで上がれる店内は荷物を横に置いて床に座って、ゆっくり絵本を手に取って吟味出来ます。

お客様と話に花が咲いて2〜3時間経つこともしばしば。

絵本を通じて人との距離が縮まる場所になりつつあると実感していました。

徐々に知ってくださる人も増え、3年目に入った矢先にソーシャル・ディスタンスって何? 

距離を無くそうとしてきたのに距離をとれって? 

と思ってたのが既に遠い昔のことのように思います。

2月の京都なんて観光地とは思えないほど人がいない。

だから、すぐに終息するだろうと思ってました。

手指の消毒液を店内に設置したし窓も開ければ換気は問題なし。

そもそも混雑するほど来客がないので密集もなし。

3月に予定している原画展『マルをさがして』(山本久美子作/ひだまり舎)の前にクラスターは絶対に出すまいと、念のため営業を予約制にしました。

やり過ぎたのかな。お客様が激減。

会期中もこれほど少ないのは初めてで、東京からお越しいただいた作家さんにも版元さんにも申し訳なく情けなかった。

それでも、今から思うと、まだ楽観してたんですね。

惨敗の3月の分まで4月は盛り返すぞとイベントを企画したんです。

『関西弁で読む遠野物語』(エクスナレッジ)の著者で民俗学者の畑中章宏さんをお招きし、朗読と解説をしていただくというイベント。

『遠野物語』は言わずと知れた岩手県遠野に伝わるお話を柳田国男が文語体でまとめたものです。

その『遠野物語』がぐーんと向こうからやってきた感じ。

東北から関西にぐーんと。もうこれ、No distance ですよ。

面識もない畑中先生にメールで依頼すると数日後には、ひょっこりご来店くださって、なんて話が早いんでしょう。大阪在住の先生ですからね。京都と大阪も No distance です。

 

3月も中旬過ぎると京都もお花見客が続々。

世界はこんなに麗らかなのに感染者数は増え続け、私の頭の中は「4月11日のイベントどうしよう」でいっぱい。

大規模じゃないからいいよね。

実家から譲ってもらったマスクを参加者に配ろう。

大きな声を出さなくていいようにカラオケ用のマイクも買った。

間隔を空けて座ってもらえるようにスツールも買った。

定員15名の募集は10名で締め切った。

考えられる対策は全部やったのに適切な間隔は2mって、なにそれ、コント? ラジオ体操でもやるわけ? 店内で10人も一遍にラジオ体操は出来ない。

せいぜい3人くらい。無理じゃん。

そこに速報が「緊急事態宣言の発令を検討する準備に入りました」でしたっけ。

なんですか、その「よ〜い、ドンと言ったらスタートしてください」みたいなやつ。

ふざけてるんですか?

 

延期の結論を出したのは、予定の日まで一週間をきってました。

申し込んでいただいた方には大変申し訳なかったです。

イベントは「不要不急」と自ら烙印を押してしまうような気がして悔しくてたまらないし、あらゆる文化的な事を止まっていくことに言いようのない不安も感じてました。

何か形を変えてでも発信はし続けないといけないという思いは畑中先生も同じで、予定の日にインタビューをさせていただくことにしました。そのために「note」にも登録して、インタビュー記事を5回連載で公開しましたので、ぜひ、お読みくださいね。https://note.com/cotachi/n/n6746bb7cac7b

インタビューを終えて、4月13日から5月22日まで実店舗は休業し、記事を発信しつつ、Web Shopに主軸を移しました。

休業する基準に京都府の病床数が満杯になったらというのを自分で決めていたからです。

実店舗を休業することで一番の不安は忘れられること。

世界的な行動変容が起きて皆が外出しなくなる。

通販で買い物をすることが今よりもっと当たり前になる。

在庫数もサービスも太刀打ちできない他の何万軒もある中で埋もれずにやっていけるんだろうか。

再開した時、みんな出掛ける楽しみなんて忘れちゃってるんじゃないかな。

思わず、Twitterで「忘れないで」と呟いたら、たくさんの人が応えてくれました。

常連さんも遠くの方からも励ましのメッセージとともに注文もたくさん入りました。

オンラインショップのある書店リストが出版関係の方から立ち上がったり、これはもう、No distance 距離って何? 

地球から太陽までの距離は1億4960万km。

だけど、光と熱は届く。

掴めないけど感じる。

きっと、これから考えるべきは太陽のディスタンスなんじゃないかな。

 

photographs and text - Satoko Kumagai

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b ookstore landlord

熊谷聡子

Satoko Kumagai

京都・伏見の絵本屋さん「絵本のこたち」の店主。絵本を通して、文化の伝承・交流などを通して、想いや感じたことを発信中。

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ブックストア『絵本のこたち』

絵本のこたちは、京都市伏見区の絵本屋です。

2018年2月15日にオープンしました。
営業時間 11:00-19:00定休日 水木曜日

駐車(2台)可。近くに提携駐車場があります。京阪中書島から徒歩約20分。

 

〒612-8241 京都府京都市伏見区横大路下三栖辻堂町76 
TEL & FAX : 075-202-2698
営業時間 11:00〜19:00 / 定休日 水・木曜日

絵本の新刊書店です

新刊の絵本を主に取り扱っています。

長く読み継がれる絵本を中心に揃えていきたいと思います。

ほんの少しですが実用書や写真集、アート本などもおいています。
 

店内は靴を脱いでお上りください

築70年を越す民家を改装して店舗にしました。

畳を敷いてた床は板張りにしました。

小さいお子さまをお連れの方も大きな荷物を汚れを気にせず床において絵本を吟味していただきたいので、靴は脱いでお上がりください。
 

ギャラリーを併設しています

土間の部分はギャラリースペースにしました。

原画展やフェア、ワークショップなどのイベントに活用ています。

過去の原画展はこちらから

Naoko Morioka

inn general  森岡尚子

6.1 2020

PEOPLE

STAY SALTY ...... people here

還る。

Living on the banks of the Yanbaru Forest ___The role of connecting

 

やんばるの森のほとりで生きる

 

—繋いでゆくという役割—

シンプルで豊かな暮らし。

自然の恵みに感謝する暮らし。

そんな暮らしが好きなんです。

 

かつて彼女は著書の中でそう語っていました。

 

彼女の名前は森岡尚子さん。

 

沖縄本島の北部には「やんばるの森」と呼ばれる、ヤンバルクイナやノグチゲラ、アカヒゲ、アマミヤマシギなどの希少生物の宝庫である貴重な亜熱帯の森があって、そのほとりに高江という小さな集落があります。

その村で、森岡尚子さんは『やんばる野草の宿』という宿を始めました。

 

東京で生まれ育ち、学校でも日々の暮らしの中でも、本当の自分や、自分が信じていようと思えるものが見つからなかった尚子さんは旅に出ます。

東京からアフリカへ向かい、そこで人の「今を生きる力」を目の当たりにしました。

訪れたアフリカの子どもたちは、常にお母さんの背中から世の中を見て育ち、子どものうちから生きるために何をしなければならないかを学びます。

小さいうちから、弟や妹をお母さんと同じように背負い、家事をこなし、ナイフを巧みに操れるようにもなります。

必要なものは自らが作り、彼らの日々の生活がまさに「生きる力」に満ちているのを見て、自分が何にも出来ない、今を生きるための能力のなさに愕然としたと言います。

 

この旅が彼女の大きな分岐点となりました。

アジアや島々を巡り、そして石垣島を経て、自分と自然や生命との安らかなリンクを求めて、生活の拠点を転々としながら最後にたどり着いたのがこのやんばるの森のほとりでした。

 

そこで彼女は「何かの犠牲のもとに成り立つ暮らし」から距離を置くことを始めます。

好きなことをして、誰かが困るならそれをやめてみよう。

誰かが犠牲になって生まれたものはなるべく使わないようにしてみよう。

つまりそれは、人として、生命として、自然や地球と共存した「依存しない暮らし」とでもいうもの。

自給自足の生活を始め、ここで子どもを産み育み、心地いい生活の柄を探しながら実践するという生き方。

15年ほど前には様々なメディアにも紹介され「情熱大陸」にも取り上げられるほど、自然と共生して生きるという彼女の生活スタイルは特筆するインパクトを人々に与えました。

 

自分を探しながらずっと旅を続け、自分が腑に落ちる生活様式を探しながら、信じていいと思えるものをひとつひとつ集めながらたどり着いたこのやんばるの森のほとりで、根を張り育むということを実践して来た彼女が踏み出した新たな地平が、宿を始めるということでした。

 

彼女が常に寄り添って来たものがここにはあります。

川のせせらぎ、鳥の声、風の音、木々のささやき、そして自然の恵みを味わって欲しい。

五感を研ぎ澄ませて、この世界にいることの幸せを感じて欲しい、と尚子さん。

 

高江は今、沖縄米軍基地のヘリパッド建設という問題に揺れています。

この高江は何もないような場所だけれど、もともとはかつて林業の拠点として戦後の復興を支えた場所のひとつでもありました。

土地が集落になるには理由がある、と尚子さんは語ります。

暮らしという文化が育まれるには、土地自体が持つ良質なエネルギーがあって、そういう場所には必ず水があって、風があって、太陽がある。人が生命として生きてゆく上でちょうどいいという場所には、そういう力が必ずあるのです。と。

米軍が来て道路ができたために高江の村は現在の場所に移転しましたが、今の宿がある場所はもともと高江の集落があった場所。

つまりこの場所は、人の暮らしの営みを生んだ良質なエネルギーに満ちた場所だったわけです。

そんな、地元の人には大切な場所であるここで、大切なものを分断しないように、ここでまた人の想いを繋ぎたいと語ります。

今彼女は、今まで自分のための探し物をして辿り着いたこの場所で、今度はここで生きる人の想いや、この場所が育んできた歴史を作って来たかつての想いまでも、未来に繋いでいこうとしているのです。

 

それは「役割」だと尚子さんは語ります。

自分が何かを成したいと希求して辿り着いたものではない現在があって、それは役目が降りて来たのではないか、と。

人は「無駄なことは何もない」と語られる人生において、その歩んできた道の全部が、現在(いま)にたどり着くための準備だったのかも知れないと思うことがあります。

彼女のこれまでの生きた道がそうだったのかどうかはわかりません。

それでも、彼女はここに辿り着きました。

そしてそれを自らの「役割」だとイメージしながら、これから色んな想いを繋いでいこうとしているのです。

 

シンプルで豊かな暮らし。

自然の恵みに感謝する暮らし。

そんな暮らしが好きなんです。

 

そう語って生きてきた彼女が今度は、高江という場所のエネルギーを受けて、それをこの場所の文化としてみんなに伝える、という役目を得たのかも知れません。

 

コロナ騒動が収束したら、ぜひ、この宿に足を運んでください。

そこで出会える自分を楽しみにして欲しいと思います。

photographs - Naoko Morioka

text - Kalākaua

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photo by So Kuramochi

inn general

森岡尚子

Naoko Morioka

大学の写真科を中退してロンドンへ渡り、その後は全国各地でアフリカをテーマにしたロウケツ染めと写真の個展を開催。
自然農法創始者・福岡正信氏のもとで自然農法を学んだ後、沖縄へ移住。現在は東村・高江で暮らす。
著書に『沖縄、島ごはん』(ネコパブリッシング)『ニライカナイの日々』(ピエ・ブックス)。

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宿『やんばる野草の宿』

沖縄県東村高江。目の前にきれいな川が流れる、やんばるの森に「やんばる野草の宿」がオープンしました。

高江の人々の暮らしが息づいていたこの場所を、また再び人々の集まる場所とし、 かつてのような人と自然との関係を、人と人との関係を、人と全ての生きものたちとの関係を取り戻すきっかけになることを祈ってます。

※現在、コロナの影響で一時休業となっていますが、6月8日以降再開予定です。ただし、沖縄への来県自粛要請の出ている6都道県(東京、神奈川、千葉、埼玉、北海道、福岡)については19日以降再開予定です。

一棟一名利用 15000円
一棟二名利用 8500円(一人あたり)
一棟三名以上利用 7000円(一人あたり)

子ども料金
6〜12才(小学生) 5000円
3〜5才 3000円
0〜2才 0円

その他詳細は下記へ

通販『やんばる酵素シロップ』

やんばる野草酵素シロップは、地上植物のエネルギーが高まる満月のころに摘んだ、この土地の自生する野草だけを使っています。野草を通じてこの土地のエネルギーがダイレクトに伝わるように心を込めて作っています。

レモン・シークワサー・酢など少し加えてください。更においしく!
・非加熱でご利用ください。加熱により酵素は失われます。
・ヨーグルトと合わせてお腹スッキリ。
・サラダドレッシングに加えたり、スムージー、かき氷などにも。
・朝、寝る前など空腹時が効果的。

 

保存方法:常温可(冷蔵庫に入れるとピンク色が長持ち)
内容量:150cc / 500cc

◎詳細と購入ご希望の方は下記、森岡農園のオンラインショップをご利用ください。

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