バウルって、ご存知でしょうか。

バングラデシュの農村部に暮らすか、村から村へと移動する吟遊詩人、どのカーストにも属さない人々。

そのワードだけで神秘的過ぎるし、吟遊詩人てスナフキンしか思い浮かばないんですけど、ユネスコの無形文化遺産にもされているらしく、ということは、実在するんですね。

『バウルを探して』は、まさにバウルを探す旅のノンフィクションです。

旅人の川内有緒さんは、当時、国連を退職したばかりという経歴も面白い。

バウルって何だろう? どこに行ったら会えるんだろう?

下調べからガイド探し、詳しく知ってそうな人探しから、この旅は何かある。

出発前から何か不思議な力に導かれてるとしか思えないのです。

 

既に幻冬舎から2013年に出版され、翌年、新田次郎文学賞を受賞されていますが、今回の三輪舎刊『バウルを探して 完全版』は、装丁も工夫がたっぷり。

その全てが過不足なく、例えば、背表紙がついてないから剥き出しの丁合は織物の模様のよう。

虹色の綴じ糸も美しいのですが、それだけでなく、パカッと開きが良いので見開きの写真もストレスなく見られます。

なぜだろう? 

今日、届いたばかりなのに、既に何年もそばに置いてる本のように手に馴染むのは、さすが、矢萩多聞さん。

もうひとつ、大きく違うのは、旅の同行者で写真家の中川彰さんの写真がふんだんに収録されていること。

既に文章を読まれてる方には、ああ、あの場面とすぐ分かる写真がたくさんで、一度見てしまうと写真抜きには考えられない、なるほど<完全版>としか言い表せません。

 

実は、写真家の中川彰さんとは一度だけお仕事をご一緒したことがあって、もう20年以上前なんですが、出版社に勤めてた頃、ある美術家のインタビューに同行していただきました。

会社の人はみんな、アキラさんって呼んでました。

インタビュー中にも手持ちのカメラで撮影されてたんですが、終了後にポートレートも、とケースから取り出されたのは木製フレームの8×10だったかな? 大きなカメラがとても美しくて、美術家さんも私も、しばし、じーっと見入ってました。

時間があったので珈琲を飲んでから帰ろうかと立ち寄った喫茶店で、さっきのカメラの話をふってみました。

木製フレームのきれいなカメラですね。

やっぱり、仕事道具にはこだわりがあるんですか?

「カメラ向けられるのって、怖いやん? ボクもこんな風貌やしな。ちょっとでも、和らいだらいいなと思て」

ああ、そういう風に対象を向き合う人なんだな、相手を構えさせないように。

写真家は見る方で被写体は見られる方、という一方的な関係ではなくて対等に、というようなことを、何だかいろんな言葉で話されてたのをぼんやり聞いてました。

ちゃんと聞いておけばよかった。

言い訳すると、言葉を探す旅に出てしまったな、という感じに置き去りにされたのです。

正確に言い表す言葉、嘘が混らないような言葉を探すアキラさんは、写真も素とか本質とか、表面的じゃないものを見ようとしてるのかなと思いました。

その頃から、アキラさんはバウルを探してたのかもしれない。

アキラさんがバウルなのかもしれない。

 

「あなたの中に すでにバウルがいるのだよ。こうして私を探しに来たのだから」

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Book 『バウルを探して』

川内有緒・文

中川彰・写真

三輪舎 刊

熊谷聡子
bookstore landlord

京都・伏見の絵本屋さん「絵本のこたち」の店主。

絵本を通して、文化の伝承・交流などを通して、想いや感じたことを発信中。

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