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PEOPLE

STAY SALTY ...... people here

紡ぐ。

Lovely little moments

何気ない幸せの一瞬

Hiroko Sakomura

7.1 2020

cultural producer   迫村裕子

一年のうち、半分くらいは国内外を動き回りながら仕事をしているので、3月の終わりにフィンランドから帰国して以来、ずっと東京、それも自分の仕事場兼住宅から大体10キロ以内の範囲にいたのは、久しぶりのことだった。

 

実のところ、最初の内は、バンザーイと思った。

今年に入って、毎月海外に出張していてちょっと息切れ状態、これで時間が稼げる、普段から気になっていたことが出来る、世界中の仕事仲間がみんな同じ状況だからテレビ会議システムと携帯とメールで凌げば良いじゃんというノリであった。

しかし、しかし、物事はそうはうまくいかない。

生きている限り、どんな状況であろうといろんなことが起きる。

ましてや非常事態であれば、ますますいろんなことが降りかかって来る。

予測出来ないことが次から次へと起きる。

こうなると、もう性根をすえて、逃げない、負けない、頑張ると覚悟を決めるしかない。

 

とは言いながらも、このような状況の中でも日々の生活の中で得ることはいっぱいあった。

それで、ささやかな近況報告。

 

まずは定番の「片付け」に挑戦。

ただ捨てるだけでなく、ちょっとした工夫もしてみた。

例えば、チューブに入った歯磨き粉。

飛行機の中や出張先のホテルから持ち帰ったものが積もり積もって箱いっぱい。

最初はそのままごっそり捨ててしまおうとしたが、思い直して使い切ることにした。

極めてささいなことではあるが、今までの「ついつい溜め込んでしまう自分の癖」を、この際是正しようと試みた訳だ。

使い切るには当分かかったが、山のようにあった小さなチューブがみ〜んな無くなった時の達成感は、なかなかのものだった。

鏡に映る自分に向かって「やったね」とニッコリ。

どうしてこんなことでこんなに嬉しいんだろうというくらいだった。

 

続いて、縁ある人たちからもらった着物の何枚かを、自分で解くことにした。

既に、着物や羽織や帯に仕立て直したものもあるが、今回は、柄や色を選びながら、一枚一枚自分で解こうと思ったのだ。

丁寧に解いて、手洗いして、アイロンをかけた。

元の反物状態に戻った布を畳の上に並べて、これもうっとり。

着物の素晴らしさは、こうして何回も蘇ることだ。

布自体も次に何になるのかを静かに待っているような気がして、これまた達成感に浸った。

この状態であれば、誰かにもらってもらうにしても、すぐに上げることが出来る。

何よりも、シャーッと古い糸が割けて行く時の気持ち良さ、カタルシス、楽しかった。

 

日々の「ご飯づくり」では、前から憧れていた糠漬けをスタート。

最近は既に発酵済みの糠床が売っていて、何と便利なこと。

昔は、台所の床に置いてあった糠漬け用の壺が、今ではビニールパックを閉じて冷蔵庫の中へ入れるだけ。

定番のキュウリやナスだけでなく、キャベツの芯もブロッコリの茎もズッキーニも、余った大根もみんな漬ける。

一日経つと、何もしないのに美味しくなっている。

この野菜の使い切り感、贅沢な気分になる。

 

調子に乗って、実にささやかな自給自足も試みた。

まるで「ままごと遊び」のようだが、ベランダにミニトマトとレタスとシソ、コリアンダーを植えた。

本格的なアルミの立派なジョウロも買って、毎日水やり。

ミニトマトは最初の3個を無事に収穫。

まだまだ実が鈴なりだから、当分は楽しめそうだ。

葉っぱたちも、毎朝、新しいのを摘んで、茹で卵と一緒に食べている。

大好きな朝ごはんがますます好きになった。

ふふふ。

 

そして、一日の仕事終わりの「ぶらぶら歩き」。

ご近所を歩きながら、ステキな佇まいのお宅を見つけてどんな人が住んでいるのだろうと想像したり、お庭の花を愛でさせてもらい、庭の手入れに感心したり、これでお茶なんか一杯どうぞなんて言われたら嬉しいなぁ〜と余計なことを思ったり。

路地でバドミントンや縄跳びをしている子供や親子連れの楽しそうな声を聞きながら、暮れなずむ一日の終わりの豊かな時間を味わう。

ゆったりとした時間の流れに身を任せていると、懐かしい子供の頃の思い出も蘇ってくる。

 

毎日のように歩いていると、近所には緑道も古墳も緑あふれる公園もあることにも気づいた。

渓谷までもある。

今までは、道中は目的地までのアプローチにすぎず、電車か車かタクシーで「移動は出来る限り早く」が鉄則。

幹線道路や近道は知っていても、小さな路地や狭い通りがどう繋がっているのかなど、あんまり興味もなかった。

だから、足の向くまま気の向くまま歩いているうちに、「えっ、ここに出るの?」と気がついた時などは、ちょっとばかりワクワクした。

大げさに言えば、まるで自分の中に新しい回路が出来た気がしたのだ。

最近では、歩くことが日常になり、友人との物々交換にも、出来るだけ電車に乗らないで歩いて行く。

「すぐに宅急便」という発想しかなかった私にとってはとても大きな進歩。

 

また、このぶらぶら歩きには、時々、「トントゥミッラ」が合流してくれる。

トントゥはフィンランドの遠い北、コルヴァトゥントゥリ山にサンタクロースと一緒に住んでいる小人たち。

トントゥには、サンタクロースのお手伝いさんとして、世界中の子供たちの様子を観察してサンタクロースさんに報告する仕事があるから、世界中どこにでも飛んで行けるのだ。

ミッラはその中でも一番小さいトントゥで、最近は、すっかり私の散歩パートナー。

自分の視点だけでなく、ミッラの目で見てみるのもなかなか新鮮。

 

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先日、とある新聞で、6歳の女の子が「クリスマス、コロナでサンタさん来ないかなぁ。外国のお年寄りだし」とつぶやいているのを読み、これは大変、トントゥミッラと一緒に「サンタクロースは今年もきっと来ますよ!」と伝えて回らなくっちゃと思い始めた。

そろそろ、世の中も外出自粛要請が解除されたから、お呼びがあれば、トントゥミッラと一緒にどこにでも出かけて行って、一人でも多くの子供たち、いや、子供の心を持った大人たちにも、サンタクロースのこと、トントゥのこと、世界は不思議なことがいっぱいあることを伝えたいと願っている。 

 

トントゥの話もそうだが、この何年間か、次世代を担う子供たちとの時間を持ちたいと願うようになった。

会社をスタートして以来モットーにしているのは、「みんなちがってみんないい。でもみんなつながっている」。

子供たちに、世界中のいろんな人と友だちになるのは面白い、それには英語がちょっと出来ると便利だよってアピールしたい。

それで、「サコママ イングリッシュ」プロジェクトを勝手にスタートさせた。

子供が集まるところに、小さなテーブルと椅子を持って行って、やって来た子供と一緒にちょっとした英語のレッスンをするというものだ。

目指すは、英語を話す不思議なおばさん。

「あのおばさん(バアさん?)は、ちょっと不思議だけど、英語も教えてくれるし、どうもボク(ワタシ)のこと、随分と気にしてくれているらしい」という立ち位置。

子供一人一人と繋がりたい。

特に、大勢の中ではなかなか声が出せない、恥ずかしがり屋さんたちと繋がりたい。

子供のつぶやきを聞きたい。

内緒話をしてくれるような関係になりたい。

 

そしてこの時期には、仲間たちとアルファベットで遊んでみた。

一つ一つのアルファベットの文字に、イラスト、アニメーション、効果音、英語の読み上げがついている。

小さな年齢の子供たちが、面白がって遊びながらアルファベットを覚えてくれたらいいな、動物の動きを真似して遊んでくれればいいなと思ったのである。

制作チームのイラストはWanju、アニメーションと効果音は瀬尾宙。

読み上げは齊藤実梨、制作マネージメントは迫村俊太郎。

データで簡単に配信可能。

 

 

こんな感じでこの3ヶ月過ごしていたある日、スウェーデンの仕事仲間とTV電話で話していると、いきなり彼女が、「今まで、まるで、’headless chicken’ みたいに仕事していたんじゃないか?」と言った。

私もそれを聞いた途端、自分の姿と、首を切られても走り続ける鶏の姿が重なった。

「ああ、そうだ、じっくり考える暇もなく、ただ走っていただけかもしれない」。

東奔西走、それが自分の仕事スタイルに合っていると思っていた。

「ああ、なんてことだ!」

それから、当分の間、headless chickenについて考え続けた。

朝目覚め、まずto do listを頭に浮かべて仕事モードで動き出すよりは、朝の新鮮な水をジョーロに汲んでベランダの草木に水やりをすることにした。

ドラッグストアで歯磨き粉のセールをしていても、使い切るまで買わない。

夕方には、美味しいご飯を炊いて、漬物と旬の野菜いっぱいの実だくさんお味噌汁を作る。

時にはゆっくり歩いて帰る。

日々を丁寧に生きる。

時間の流れをゆっくり味わう...

すごくシンプルなことだけど、今になってやっと気づいた。

そう、もう、headless chickenには戻らないし、戻れない。

photographs and text - Hiroko Sakomura

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cultural producer

迫村裕子

Hiroko Sakomura

文化プロデューサー。S2株式会社代表。美術展やイベントなど国際的な文化プロジェクト、教育プログラムを企画実施。この30年はフィンランドを中心に北欧との繋がりが強い。主なプロジェクトに、「来て、見て、感じて、驚いちゃって!おもしろびじゅつワンダーランド展」、「オードリー・ヘプバーン展」「観世座ニューヨーク公演」「チベット密教美術展」「フィンランド陶芸展」「マリメッコ・スピリッツ展」など。One Show Interactive 2002最高賞、2008年度グッドデザイン賞、2008年第2回キッズデザイン賞-金賞・感性価値デザイン賞、Faith & Form International Awards 2009を受賞。著作翻訳に「アメリカ・インディアンの神話」、「ラップランドのサンタクロース図鑑」、「ありいぬうさぎ」、「ノニーン!フィンランド人はどうして幸せなの?」、「トントゥミッラとなかまたち」など多数。

  • ブラックInstagramのアイコン

展覧会

「ムーミン展」THE ART AND THE STORY

7月4日から大阪・あべのハルカス美術館でオープン。2021年の春まで全国巡回。

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トーベ・ヤンソン

《イースターカード 原画》

1950年代

グワッシュ、インク・紙

ムーミンキャラクターズ社蔵

Tove Jansson,

Drawing for Easter card,

1950s, Moomin Characters

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展覧会

ザ・フィンランドデザイン展 〜自然が宿るライフスタイル〜』展

2020年11月28日(土)より開催を予定していた「ザ・フィンランドデザイン展 ― 自然が宿るライフスタイル」(東京会場)につきましては、2021年冬に会期が変更となりました。

Photo credit: Installation image from Modern Life! -exhibition at HAM Helsinki Art Museum in 2017.

photo: © Hanna Kukorelli, Maija Toivanen / HAM.

 

2017年にヘルシンキアート

ミュージアム(HAM)で開催された

「モダンライフ展」の展示風景

展覧会

アイノとアルヴァ 二人のアアルト 建築・デザイン・生活革命 

 木材曲げ加工の技術革新と家具デザイン』展

来年の3月からは規模を拡大して、世田谷美術館、兵庫県立美術館に巡回。

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photo by 久保博司(Photo Studio K)

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© 2020 by ALOHADESIGN

Proudly created by Tsutomu Kinoshita

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