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PEOPLE

STAY SALTY ...... people here

紡ぐ。

Inspiring transformation

© Víctor Tardio

これまで...

2020年3月14日、スペインでは緊急事態宣言が発令され、完全な都市封鎖が始まりました。その前日、私はバルセロナから約240km南に位置するポルツ・デ・ベセイトで、高低差300mのロッククライミングを楽しんでいました。岩壁がそそり立つ自然豊かな美しい国立公園が有名なエルス・ポルツは、クライマーたちの楽園です。素晴らしいクライミングパートナーとこの岩壁を登るひとときは、私にとって宝物のように大切な時間です。

 

現在はスペイン、カタルーニャに暮らし、ロッククライミングに夢中になっている私ですが、それまでの12年間は海外で生活していました。2001年には、障害者のための活動を行うフランスの非営利団体Horizons pour Tousに参加し、フランスから南太平洋に浮かぶ仏領ポリネシアまでの世界一周セーリングに同行。その後、2005年から2009年までは東京に、2010年から2016年まではインドのデリーやリシケシュに暮らし、フリーランス写真家として、旅をテーマとした各国の雑誌や国際的メディア・通信社の仕事をしてきました。

 

長い海外生活の後、2017年にスペインに戻った私は、本格的にロッククライミングにのめり込むようになりました。ですが、クライミングに心を撃ち抜かれたのは2016年の夏のこと。ロッククライミングは、サーフィン同様、単なるスポーツではなく「生き方」です。私は、クライミングという生き方に、恋をしてしまったのです。

 

仕事の面でも充実していた2019年は、メキシコ出張で幕を開けました。チャヨテというメキシコ原産の野菜に関する取材旅行でした。その後、スペインのバレンシア地方での取材。3月にはノルウェー産のタラに関する記事のためロフォーテン諸島へ。さらにスペインのバスク地方やフランス南部にも行きました。セネガルでは、マッドフルーツという果実の取材をし、一年の締めくくりにはザクロをテーマにした記事のため、イランへ向かいました。

 

出張のない期間はロッククライミングを満喫しながら「Maya」での生活を楽しみました。Mayaとは、全長6mの私のモーターホームです。海辺で夕日を眺め、鳥たちのさえずりで目を覚ます。自然に囲まれながらヨガをし、Mayaに当たる雨音に耳を傾け、ベッドから見える月を眺めながら眠りに落ちる。そんな豊かな毎日を過ごしていたのです。

インスピレションのはざまで

 freelance travel photographer   イチャソ・ズニガ・ルイス

Itxaso Zuñiga Ruiz

7.1 2020

© Roger Villena

ロックダウン...

ロックダウンをきっかけに、多くの人が仕事もライフスタイルも変えようと思ったかもしれません。でも私は、とてもそんなふうには思えませんでした。トラベル・フォトグラファーの仕事と、マルチピッチルートでのクライミング。最も愛する2つの世界。長い年月をかけてようやく巡り会えた素晴らしいクライアントたち。お気に入りの暮らし。恵まれた環境に私は感謝していました。

 

そんな中、世界が一変してしまったのです。刻々と変化する不安定な状況に、私は打ちのめされました。モーターホームでの生活も、クライミングもできなくなり、私の記事が掲載される機内誌もしばらく休刊になり、仕事も入ってこなくなりました。

 

 世界中がショックを受け、喪失感と悲しみに打ちひしがれていました。生活が大きく変わり、大切な何かを手放すことを余儀なくされたのです。深い悲しみの感情には、拒絶、怒り、罪悪感、落ち込み、受容という5つのステージがあるそうですが、都市封鎖が始まった当時の私は、現実を受け入れることを完全に拒絶し、ときに怒りを感じていました。

 

 スペインの作家アルベルト・エスピノーザは、父親によくこう言われていたそうです。「人生とは、手に入れたものを失うことを学ぶ場所だ」と。この言葉は、トラベル・フォトグラファーとしての私のキャリアにも、よく当てはまります。過去15年間で100以上のクライアントと仕事をしてきましたが、今も付き合いがあるのは10~15社。その十数社でも、メンバーがすっかり入れ替わっている会社は少なくありません。リーマンショック後の2009年を中心に消えていった雑誌やメディアも多く、今回のCovid-19の影響で倒産した会社もあります。

 

 50日間にわたり完全な都市封鎖が行われたスペインでは、マスクと手袋の着用が義務付けられ、生活必需品の買い物や通院のために1人で外出することのみが許可されていました。警察が毎日街をパトロールし、車両の通行規制や職務質問を行う姿も。街は静まり返り、スペイン全体に、まるで黙示録が示す終末のような光景が広がっていました。

 

 ロックダウン期間中、私は写真家としてのキャリアを高めるための活動を行い、「LVRS」と名付けた新しい写真プロジェクトを進めることにしました。LVRSは、火・土・水・空気という四元素と性との関係性をテーマにしたフォトエッセイ・プロジェクトです。

 

もう1つ、外出できない期間に私が没頭したのは編み物です。手元に毛糸があったので、帽子1つとマフラー2つ、ショール1枚、マスク2つ、それから、コースターのセットも作りました。今はターコイズ色のマフラーを編み始めたところです。

これから…

これを書いている今、私がいる村はフェーズ2(完全都市封鎖が解除されてから35日)に入りました。フェーズ2では、外出が許可され、地区内での移動が可能となり、多くの店が営業を再開しました。クライミングも許可されています。ただ、残念なことに大都市バルセロナはまだその前の段階、フェーズ1に入ったばかりです。スペイン人にとって最も難しいのは、不慣れなマスクを着用しなければならないこと。そして、友人や知人と2mの距離を取らなければならないこと。挨拶のときハグをして、両頬に1回ずつキスをする私たちにとっては、辛いことです。

 

これまでの生活が失われたことへの悲しみはまだ癒えていません。特に仕事については、厳しい状況が続いていて、先が見えません。ですが私には強みがある。それは「人生の津波」を乗り越えてきた経験です。2009年にはクライアントの半分が倒産し、2015年には、13年連れ添った夫と離婚し、新たな人生をスタートさせました。そこで私は、永遠に続くものはない、ということを学びました。

 

 だからこそ、自分自身と、愛する人たちを大切にしたいと思うのです。毎日をハッピーに、元気に過ごそうと思うのです。そして、目の前のことに集中して、焦らないこと。不確実さに対応する方法を学び、先の先まで計画を立てすぎないこと。この状況が落ち着いたら、立て直す時が来る。その時のためにエネルギーを蓄えておこう。そして何より重要なのは、自分のハートに注意深く耳を傾けること。ハートはいつも、どこに向かえばいいか、次に何をすればいいかを教えてくれるのです。

 

今は、この状況下でも稼働しているクライアントの仕事を続けながら、ソーシャルメディア・ビジュアルコンテンツ・クリエイターというもう1つの専門スキルに力を入れ、企業やNGOとのプロジェクトを進めています。常に学び続け、最新の動向をキャッチしながら、時間があるこの時期を生かして、前からやりたかったビデオ編集とデザインのスキルを磨くための勉強もしています。

© Maribeth Mellin

今、私の悲しみのステージは「怒り」から、「落ち込み・受容」へと移行しつつあります。そして、6番目の新しいステージを加えることになるでしょう。それは「感謝」です。

 

かつて、ある仕事を失ったことで、さらに素晴らしいチームとの出会いや好条件がもたらされました。離婚によって、精神性を深める機会や、ヒマラヤの麓の町での生活という、かけがえのない体験を手に入れました。

 

そうした経験から、私は知っているのです。今はとても厳しいけれど、これは、他にはない特別な時間であり、この経験によって、必ず美しい何かが生まれるということを。これからの数か月に体験するすべてのこと、2020年という年は、ひときわスペシャルなものとなり、今後の人生で、何度も思い出す出来事となるでしょう。

 

 自らの意思であろうと、そうすることを余儀なくされたのであろうと、何かを手放すことで新たなスペースがもたらされます。私は今、その過程の真っただ中にいて、私の中に新たなスペースが生まれつつあります。手放した先に何が生まれるのか、来年あたりにご報告できることを祈っています。

text and photographs - Itxaso Zuñiga Ruiz (unless otherwise specified)

translation - Mikiko Shirakura

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© Víctor Tardio

ロックダウン中、そしてこの文章を書いている間、いつも聞いていた曲です:Sleeping at Last – Southern.

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© Patrick Golding

freelance travel photographer

イチャソ・ズニガ・ルイス

Itxaso Zuñiga Ruiz

1978年、スペイン、テラサ生まれ。フリーランス写真家。

ツーリズム分野を得意とするソーシャルメディア・ビジュアルコンテンツ・デベロッパー。熱心なロッククライマー。モーターホーム愛好家。ニッター。2005年から2009年まで、スペインの通信社や日本の旅行雑誌の仕事をしながら東京に在住。2010年から2016年まではアジア諸国の旅行雑誌の仕事をしながらインドのデリーやリシュケシに暮らす。2017年よりスペインのカタルーニャに戻り、海外メディアの仕事を続けながら、NGOや旅行関連会社のソーシャルメディア向けビジュアルコンテンツを制作。

2018年、旅と写真への想いを紡いだ2冊目の写真集

『The Journey』を出版。

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写真集『The Journey』

「旅」と「写真」をテーマにした写真集。説明的な写真やキャプションを使わず、ポエティックなイメージや文を用いて、各国への旅、人生の旅への想いが綴られている。どこで撮られた写真なのか、何が写っているのかよりも、時間と空間を超えた内的世界に触れ、自分がどう感じるかを観察しながら楽しみたい一冊。

著者:イチャソ・ズニガ・ルイス

初版:限定版150部(番号・サイン入り)

サイズ:21cm x 21cm

頁数:208頁

内容:カラー写真188点とテキスト。

トレーシングペーパーの別冊(20頁)に著者インタビューと過去に発表された関連する写真エッセイの紹介等を収録。

言語:英語、日本語、スペイン語、カタルーニャ語

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© 2020 by ALOHADESIGN

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