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PEOPLE

STAY SALTY ...... people here

遷す。

 

 

Would you like to waltz with a listening demon?

私は、あっちでもこっちでも色々な人に質問をぶつけてしまいます。

不躾だし、そもそも品がない行為かもしれないと思うのですが、聞かないではいられません。

 

私の仕事は、本を編集したりプロデュースしたりすることです。

私が主に関わっているビジネス書の世界では、

著者にインタビューすることを通じて原稿を完成させることが多く、

本によっては10時間も20時間も著者に話を伺います。

 

だから私の質問好きは、仕事のせいで開発されたのかもしれないし、

あるいはこういう性格だから、この仕事に巡り合ったのかもしれません。

どっちが正解かはわからないけど、いやきっとどっちも正解なのだろうけど、

とにかく仕事でも仕事以外でも、しょっちゅう誰かに何かを質問しています。

暑苦しいヤツですね(苦笑)

 

で、最近私のこの行為が何かに似ていると気がつきました。

「読書」です。

私は「人」という「本」を読んでいるのだと思うのです。

 

面白そうな本が目の前にあったらページをめくらないではいられないように、

面白そうな人がいたら「質問」というツールを使って、その人を読み始めてしまう。

 

「会社員をやめて自分で商売を始めたのは、何かきっかけがあったんですか?」

「最近の自慢話を教えてください」

「誰かをカッコいいって思うのはどんなときですか?」

などなど。

 

飲み屋だったり初対面の仕事相手だったり旅先で出会った人だったり、相手はさまざま。

最初はそれでも当たり障りのない質問から始めます。

相手が扉を少し開けてくれたら、ズズズイーっと奥を目指して一直線。

質問と答えの応酬を何度か続けているうちに、

知らない世界がだんだん見えてくるともう止まらない。

 

たとえば、活躍している人は皆、問題を課題に変えるのがとても上手なこと。

神楽坂という街が、飲食業界の人にとって独立して勝負する格好のスタジアムになっていること。

パン屋さんでも陶芸家でも手仕事をしている人は、自分の言葉を持っている人が多いこと。

いろいろなことを私は「人という本」から知りました。

ジャンルも、ミステリーだったり、ラブロマンスだったり、ビジネスだったり実に多彩。

ヒト本(いちいち「人という本」と書くのメンドくさい。縮めちゃっていいですよね?)におよそ駄作はありません。

 

知識が得られて面白いだけでなく、次第に立ち現れてくる未知の世界が興味深い。

外国を旅して車窓の風景に心が踊るような感じとでも言いましょうか。

 

でも、自分は楽しくても相手にとってはそうとは限らないということは、

キモに銘じなくてはいけないなと思うのです。

 

幸いなことに、私という聞き魔のおかげで、言語化できていなかった想念がクリアになった、

スッキリしたと感謝されることもあります。

話しているうちに、大切なことに気づけたと言われることもあります。

でもその一方で、「しまった!」と思わせてしまうこともあるからです。

 

たとえば数年前、馴染みの美容院で起きたこと。

何年も通っていた原宿の美容院で、私はついつい聞きすぎました。

 

私「美容師さんとお客さんは、オープンな場所ではあるけど一定時間を2人っきりで過ごすみたいなものじゃないですか。どっちかがどっちかを好きになるみたいなことってあるんですか?」

美容師さん「ありますよー。ボクこれでもモテますよー」

私「でもYさん、独身ですよね? やっぱりお客さんとは恋愛しないように気をつけてるんですか?」

美容師さん「いいえ、そんなわけでも無いんですけどー…」

 

このあたりまでは、普通ののんびりした会話だったのです。

その次の私の発言がマズかった。

私「相手と自分の好きのタイミングが一致するのって、奇跡みたいなものですからねー」

要は、相思相愛なんてそうそう起きないですよね、と相手に合わせたつもりでした。

 

いまでも覚えているのですが、この瞬間その美容師さんのハサミが止まりました。

そして、学生時代に奇跡的に出会った女性と恋に落ちたこと、

ところがその女性は親友の恋人だったこと、

結局親友もその女性も自分も不幸になったこと、

いまだに後悔を引きずっていることを話してくれました。

 

店内は結構混んでいましたし、美容師さんはその店のオーナーでもあったのですが、

多分4、50分くらいでしょうか、

私たちは彼の大学時代の辛い恋の思い出から抜け出せなくなりました。

 

やがて話は終わりカットが再開。私は普通にお勘定をして帰りました。

成就しなかった恋がその後の彼の人生に及ぼした影響に思いを馳せながら。

 

このことがあったあと、私は2度ほどそのお店に髪を切りに行きましたが、

結局その店に通うことをやめました。

その美容師さんが、薄皮1枚分だけよそよそしくなってしまったからです。

心の奥にしまっていたことを無理に引き出してしまったと気づいたのは、そのときです。

 

ヒト本を読む行為が、実際の本を読む行為と決定的に違うところは、ここかもしれません。

実際の本は、面白ければどんどん読み進めればいいけれど、

ヒト本は、いくら面白くてもページは慎重にめくらなくちゃいけない。

 

ヒト本のページは、とっても破れやすい。

一緒にワルツを踊るように、相手に集中して丁寧に慎重に呼吸を合わせること。

無理に踊らせないこと。

 

強引にまとめると、私は相手と上手にワルツを踊りながら、その人の物語を読みたいってことですね。

相手の足を踏んづけないようがんばります。

 Kaori Yonedu

9.4 2020

book editor & publishing producer   米津香保里

聞き魔とワルツを踊りませんか?

text and photographs -  Kaori Yonedu

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空雲
月面小皿
公園の鳩
お茶カフェ
桃とブッラティーナ
吊るした花
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ぴょんきち
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書籍編集者&出版プロデューサー

米津香保里

Kaori Yonedu

書籍編集者&出版プロデューサー。
株式会社スターダイバー代表。
ビジネス書を中心に本の世界で15年超。
神楽坂の地で本づくりやコンテンツ制作に勤しんでいる。
著者の代わりに本を執筆するライターの養成塾「上阪徹のブックライター塾」事務局。
本屋さんのイベント情報をお届けするサイト「本屋で.com」主宰。

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