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STAY SALTY ...... people here

征く。

 

 

Sense of wonder

「ユキオ」くんとの出会い

 

「それは、独立して、1年目の頃。

もう12年くらい前だと思います。
 

上野でのお仕事の合間に時間があったので、ふらりと上野動物園を訪れました。 

久々の動物園はとても静かで、みんな寝ていて。

それまでの動物園のイメージはわたしにとってネガティブな印象しかなく

「檻の中でかわいそう」という苦い気持ちの方がこの頃は大きかったんですね。

そんなことを思いながらさらに進んでいくとホッキョクグマのエリアに到着。
ふと見上げると、何やらホッキョクグマが直立していました。

 

 かわいいじゃないか… !

 

さっきまでは動物園を憂いていたのに、この出会いがすべてを変えてしまったのです。

それがホッキョクグマの「ユキオ」くんとの出会いでした。

 

最初は単純に「ユキオくんがかわいいから」という

とてもシンプルな理由で動物園に通っていました。

そして何度か通ううちに少しずつ動物ごとの生態データ情報が蓄積されていきます。

そのうち、それぞれの個体のキャラクターなどが理解できるようになり

ますます愛おしい存在が増えていったのですね。

動物たちそれぞれへの興味関心が湧いたことで

1つまた1つと動物園へ抱いていたネガティブな感情が消えていきました。

そして「動物園が誕生した理由」「動物園の本当の役割」など少しずつ調べたり

自然と園内で目についた活動報告などの看板や配布物から知るようになったのです。

 

社会生活を送る上で、しかもクリエイターとして生きてゆく上で

お金を稼ぐことや成果物を生み出してゆくことは切っても切れない大切なことです。

でも、その実、その活動内容は刺激にあふれながらも

とても忙しく、疲弊も消耗も伴う日々の大変な営みです。

それはそれで、自分が求める「もう1つの大切なもの」を

ある意味犠牲にしている日々とも言えるわけです。

動物園に行けば、心身ともに自由になれる気がして。

心の中で見て触れて感じることができ

大きく深呼吸をして何ものにも捕われることのない時間を過ごすことができます。

ここに来れば「とてもシンプルで1番大切なこと」を思い出すことができるのですね。

それは言葉にできず、目に見えなくて、とても温かいもの…

わたしたちが生きてやがて死んでいくこと。

この世界の美しさや喜び。

説明できない不思議な出来事や大自然の神秘の力。

自分が求める「もう1つの大切なもの」がここにはあったのです。

そしてこの動物園を巡って、動物たちをカメラに収めるということが

次第にライフワークになっていったんですね。

 

思えば、私がこの仕事を選んだのも「思いつき」でした。

志を持って入社した、クルマの設計デザインをするという

CADエンジニアとして働いていた会社の研修期間中に

ふと降りてきた大きくてとても明るいエネルギーのようなワンダーな思いつき。

ある朝急に「私はカメラマンになる!」と決めたのです。

 

生きていると、道を選んだり、何かを選択する機会の連続だと気づきます。

そんな中で常に何を指針にしたり頼りにするのかは人それぞれだと思います。

もちろん選択の中には経験という大きなエネルギーが欠かせないものもありますが

経験のないことを選んで決断する時に必要なことは、

こういう不思議な力の作用というものがあるのではないか。

私にはまさに

「センス・オブ・ワンダー」ともいうべき感覚が道を示してくれるような経験が常にあるのですね。

 

役者として生きた経験

 

小学2年生から大学生まで、役者として仕事をしていました。

小学2年生のとき、ミュージカル「アニー」の出演者を募集していたので

親がオーディションに応募してみたらなんと合格して 。

その舞台は役者業未経験の幼い私に、やることなす事全て巨大な壁となって迫ってきていました。

学校も早退したり修学旅行も欠席しました。

演技、歌、ダンスだけではなく、経験値の何もかもがゼロでしたから。

それでも、半年後多くのお客様の前で歌って、演じていました。

スポットライトを浴びたあの時の感動は今でも忘れることができません。

そしてその日々は

小さいながらも、「現状をどうしたら打開できるのか」を毎日必死に学ぶ日々でもありました。

どうしたらいいのか、日々淡々とトライ&エラーをしていたと思います。

導いてくれた指導者やスタッフの方々によって示されたその先に見えた答えを

なんとか習得しようと必死だったのです。

そういう不器用なトライ&エラーをこの頃から経験できたことは、

その後のフリーランスのフォトグラファーとしての活動や

仕事やプロジェクトに立ちはだかった壁たちを乗り越えるために必要な

そういうチカラを身につけることに繋がっていたのかなと感じています。

そして、そこで経験したことが悩みにぶつかっても「なんとかなる」とか

「やってやれないことはない」と思えるような今の私に深くつながっていて、

今の人生にとって大きなエネルギーと自信になっているのかもしれません。

 

 

新しい命

 

私のお腹の中には今、小さな命が宿っています。

妊娠6ヶ月の安定期を迎えています。

もともと私には「わたしは男性になりたい」というような想いが大きかったのではないかと思っています。

女性としての性を存分に味わい尽くしたいという気持ちと

それを差し置いてでも、自分の人生を自由に生き抜きたいという両極端の気持ち。

わがままなわたし自身と常に戦ってきたように感じています。

多分これはずっと子どもの頃からずっと引きずってきた感覚なのですが

とうとう高齢出産という年齢になってから

後悔だけはしたくないので妊活にトライすることにしたのです。

 

今の日本社会の子育て環境や世界情勢や自然環境などを鑑みて

本能的に近年は子作り自体を躊躇っていたのも事実です。

ただ次の世代には次の価値観が生まれるし

また違う進化をしていく過程のような気がするので

それに対して良し悪しを個人が勝手に判断すべきではないとも思ってもいました。

さらに、ここで1つ妊活で難しい壁が。

旦那さんの仕事柄1年のうちに半年以上、多い時は3/4は海外へ出張へ行ってしまうため

自然妊娠でのタイミングが難しいと感じていたんですね。

数少ないチャンスに一か八かに賭けるには、

高齢の今となっては勝てない賭けだと思っていたので、

2019年夏に体外受精ができる専門クリニックへ行くことになりました。

その時、わたしは37歳、旦那さんが41歳。

結婚した当初はいつか自然妊娠できたらいいなと思っていましたが、

2人の生活そのものが時間と距離を隔てていることが多いので

タイミング法や人工授精ではなく、最初から抵抗なく体外受精スタートを希望。

結局、顕微授精になったのですが、最短コースでトライして

今年2020年3月に無事妊娠することができたのです。

 

妊娠して、お腹の中の子どもと一緒に過ごしていて、

今はゆっくり母になっていく変化の時間を味わっているところです。

お腹からノックされるときの不思議な感覚や、

今日も元気に育っているのか気になって仕方がない毎日です。

命を育むという神秘的で素晴らしい経験の真っ只中にいるのだと思うと、

思い切って妊活に踏み切って良かったと思っています。

 

 

センス・オブ・ワンダー

 

これまで、ただ好きでライフワークにしていたことが

自然と仕事に結びついて

動物園と関わる貴重な時間と機会をいただくことも少しずつ増えてきました。

そんな中で、動物園とそれに関わる環境そのものにまつわる様々な問題も知ることになります。

そして、数えあげればキリがないたくさんの課題と密接に

今も精一杯現場で取り組んでいる動物園の方々が多くいることも知るのですね。

何か力になれないかと常に考えている状態なんです。

とにかく、わたしにできることは「動物園に今日も行く」ということしかないと思いました。

かわいい推しメンに会いに行くだけでも元気をもらえますし

原点に立ち返る時間になります。

これからも、書籍、雑誌、アプリや写真教室の開催などで、動物、動物園へ出会う機会を増やして、

その楽しさ、素晴らしさを伝えられるのは、わたしにとっては写真しかなかったので、

少しずつでもたくさんの方に魅力を発信できるようにこれからも活動していきたいと思います。

 

そして、子どもが産まれた後、これまでと違った価値観に出会うのかなと思っています。

復帰した後もこれまでのがむしゃらな働き方とは変わって、

子どもの成長に合わせてスケジュールを組んだり、

仕事や撮影内容ももしかしたら変わるのかなと思っています。

写真や動画を通じて、子どもの事を発信していきたいと旦那さんと話していたので

SNSの発信内容もまた変化していくのかもしれません。

 

これまでも興味関心あることに対して、自然と仕事に変わっていったり、

次の出会いに結びついてきたので、出産後もまた何かしら違う変化に出会えると確信しています。

それが今から楽しみで仕方ないです。

自身にとって必要なことしか人生に起こらないと思って生きてきたので

最適なタイミングに、出会って別れて、何か失って得ているのかもしれません。

なので、こうして今を存分に葛藤しながら、一瞬一瞬を大事にしていこうと思っています。

そして、そこでまた、「センス・オブ・ワンダー」な感覚と出会えたらいいなと思っています。

 

その感覚はこれからもきっと、私の道しるべであり続けるのかも知れませんから。

Yurica Terashima

8.2 2020

photographer   寺島由里佳

センス・オブ・ワンダ

text and photographs -  Yurica Terashima

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photographer

寺島由里佳

Yurica Terashima

ポートレイトを中心に、広告雑誌媒体などで活動中。ライフワークで動物園にいる動物たちを撮り続け、全国・世界の動物園を巡るのが夢。ポストカード、iPhoneケースなど企業とのコラボグッズ開発の他、立教大学の講師、企業・行政とのイベント企画なども行う。

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