ON THE WAY

STAY SALTY ...... travelers on the way

1.3 2021

fragrance adviser / writer / traveler   aco

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旅に出よう 

私の旅に

Let's go on a journey.

My journey.

 

「あの時旅してよかったよね」

先日、約8年ぶりに再会した旅友だちと交わした会話。

お互いに自然と口に出たこの言葉は、私たちが出会ったバンコクの安宿、カンボジアのでこぼこ道、水より安いビールと屋台飯を毎晩食べていたあの頃へと私をタイムスリップさせた。

 

私の人生に旅は欠かせない。

振り返ると、ヨーロッパ一人旅からはじまり、東南アジア、アフリカ、アメリカを旅した学生時代を経て、今度は留学で1年間イギリスに住むことになり、社会人になると海外出張でアジアを中心に色んな国を訪れた。

 

思えば10年以上毎年必ずどこか海外を旅していたことになる。そんな生活が当たり前になっていたので、今回のコロナによる外出、渡航自粛は想像以上に心理的なダメージが大きい。

 

パッキングをして、空港に向かい、飛行機に乗る。

あの離陸の瞬間ったらもう!

誰も私のことを知らない土地を、異邦人さながらさまよい歩く時の高揚感。

そうした旅のわくわく要素は、なくなると途端に恋しくなるものだ。

そして、「外の空気を吸う」ことは、私にとって定期的に必要というより、必須の行事だとわかった。

 

はじめて訪れたのはフランス。

海外文通で知り合ったフランス人の女の子と再会するためだ。彼女の家族みんなが温かく迎えてくれた日々は、今思い出しても思わず笑みがこぼれてしまう。

その時はまだ、大きなスーツケースを抱えた旅人、というよりも「普通の観光客」といった感じだった。

 

しかし、2回目のフランスの旅で、その大きなスーツケースを盗難されたのを機に、私はもっとワイルドな旅人に変化した。

フランス到着2日目にして姿を消したスーツケースの中には、現地で着ようと思っていたお気に入りの服、自分の肌や髪に合った化粧水やシャンプー(硬水、乾燥のWパンチが激しいヨーロッパでは体質に合うコスメを探すのは大変!)、友人たちに渡そうと用意したお土産...思い入れのある、あらゆるお気に入りが詰まっていた。

だけど、それらはもうない。

戻ってくることも望めなかった。

 

あまりにもショックすぎて、逆に笑ったりして平気なふりをしていたが、夜になると「あぁ、あれもこれもないのか」と、愛着のあったモノたちが浮かんでは消えていった。

しかし、この旅を通してモノへの執着がストンと消えたのも事実。

 

そして、次の目的地を東南アジアに定めると、

関西人気質が爆発したのか「取れるもんなら取ってみぃ!」といわんばかりに、100円ショップで必要最低限のモノだけを揃え、「足りなくなったら現地でなんとかする」発想に切り替えた。

フランスの滞在期間の倍になる旅なのに、荷物はバックパック1つと半分以下にまとまった。

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フランスをはじめ、洗練されたヨーロッパの街並みや建築が好きな私にとって、東南アジアはまさに冒険の連続だった。

日本で予約していたゲストハウスに空港からタクシーで向かうも、何度探しても見つからず「ここにはないよ」と運転手もあきらめ、全く知らない道端にポツンと降ろされてしまった。

 

スマホはある。でも、電波はない。

どうしよう。

右も左も全くわからない。

タイ語ももちろん、わからない。

途方に暮れても日が暮れるだけ。

「何とかしなくちゃ」そして、頭の片隅にあったバックパッカーがたくさんいる街、あそこに行こう!と思い立った。

「カオサン」知っているのは、この4文字だけ。

 

バイクタクシーのおっちゃんを捕まえ、カオサンを連呼する私。

通じたのかどうかもわからなかったけど、とりあえずバイクの後ろに乗る。

「ちゃんと捕まって!」とおそらくタイ語で言いながら、おもいっきり密着させようと目論むおっちゃん。

「セクハラじじぃめ」と文句を放ちたいが、今はカオサンに行くことで頭がいっぱい。

 

激しいスコールが降り出すと、「自分はいいから」と私に合羽を着せてくれたおっちゃん。

「くそぉ、優しいじゃないか」と憎めなくなる私。

そして、ようやく着いたカオサンは、それまで通ってきたどのエリアよりもフリーダムでまさにカオスに映った。

ここはタイだけど、欧米人もアジア人も同じぐらいいるし、露店が立ち並びどこもかしこもパーティーをしているような盛り上がり。

 

とりあえず今晩の寝床を確保しようと、行き当たりばったりで宿を探す。

たどり着いたのは、いかにも日本らしい名前をしたホステル。

初日からタイの洗礼を受けた私は、もう何が何だかわからず、とりあえず横になって休みたかった。

だから、南京虫が出るとか、部屋が汚いとか、シャワーの水圧が弱いなんて噂がある所でも、もうお構いなしだ。

 

スーツケースを盗難され執着心がなくなったのがフランスなら、タイは「計画性」といった秩序や「こうすべき」という思い込みがなくなった場所だ。

もう「なんでもござれ」といい意味でこだわりがなくなり、「なんでもかかって来い」と肝が座った場所でもある。

 

次の日はバンコクを観光して、ラオスーベトナムーカンボジアの順で旅をしようと思っていた。

しかし、同じドミトリーに泊まっていた、その日はじめて知り合った旅人が「明日、カンボジアに行く予定なんだ」というと、意気投合し一緒にいくことに。

この旅人こそ、冒頭で話した8年ぶりに再会した旅友だちである。

ノリの良さと苗字が同じということで「なんか合う」と感じたのだ。

 

その後の道中も、ATMからお金が引き出せなくなったり、

カンボジアでひどい下痢に苦しんだり、

ベトナムーラオスの山越え夜行バスでトイレに困ったり、

色んなトラブルがあったけど、

毎日が刺激に溢れていて心から「楽しい!」と思えた旅になった。

なんというか、「生きてる」って実感できたのだ。

 

進学、就職を経て生活に、人生に、自分に必死だった私は、すっかりこの「生きてる」感覚を忘れていた。

「あの時と今は違うから」と否定することもあった。

だけど、今年からフリーの物書きとして、また香水クリエイターとして、なんの後ろ盾もない「素の自分」で生きる決心をしてから、あの時の「生きてる」を味わうことの大切さを痛感している。

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会社員を辞め、そして今までの自分の「ねばならない」呪縛を解放し、人生を楽しむことに集中しよう。

それを許す。

MUSTからWANTに舵を切った私は、旅のわくわくを新たに楽しんでいる。

実は、今も旅先のホテルから書いているのだが、国内でも旅はやっぱりいい。

 

いつもと違う場所で過ごす日々は、自分の中の1+1=2が通用しない。

だからこそ、楽しい。

自分の価値観が時に強制的に変化をうながされ、概念の大きな断捨離を引き起こす旅。

そして、研ぎ澄まされた新しい目線で世界を見る。

このプロセスが短期間で繰り返される旅は、時に過酷だが、必ず自分の糧になる。

そうさせようと旅人たちは、夢中になって旅をつづける。

 

「あの時旅してよかったよね」

うん。心からそう思う。

飛び出した先に待っている未知なる世界は、いつも私を魅了して止まない。

人生の新しいステージを切り開いたばかりの私は、歩んできた旅の道のりを思い出しながら、また次なる目的地へと旅をはじめる。

旅友だちとの再会もここで旅について執筆することも、すべてが「行き当たりばっちり」に思える。

この先も前へ進もう。

私の旅をつづけよう。

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photographs and text - aco

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fragrance adviser / writer / traveler

aco

言葉と香りの人。大学院、商社勤務を経てライターに転身。調香の勉強をしながら、日本神話にインスピレーションを受けたオリジナル香水の製品化を目指す。五感で感じる言葉を綴っていきます。

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