ON THE WAY

STAY SALTY ...... travelers on the way

11.1 2020

therapist / writer / traveler   倉光寿美子

Sumiko Kuramitsu
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旅の途中、飛行機の中でちょっと泣く

Crying a little on the plane during the trip.

飛行機の中で泣くという経験をよくする。

初めて泣いたのは、北海道から東京へお嫁に行った時。

大好きな人との新生活の始まりは嬉しかったけれど、

生まれ育ち、10年の社会人生活を送った大地を離れる時にはセンチメンタルになった。

飛行機の最前列で涙がポロポロ落ちてきてしまうのを、

隣の伴りょは気づいていなかったけれど、

向かいに座っていたキャビンアテンダントさんが目で

「大丈夫?」と気遣ってくれたのを覚えている。

 

東京に住んでいた16年間、旅は沢山した。

本当に沢山。

年に2回は最低、

10回くらい海外に飛んだ年もあったかもしれない。

この時期、

出かけた先から日本に帰る飛行機でちょっと泣いた。

翌日からまた戦いの日々が始まるのかと思うと、

辛くて涙ぐんだ。

正確にいうと、泣いちゃうと決意が揺らぎそうで

ぐっとこらえた。

東京での日々は、

元夫が持っていた小さな会社の経営の一部を担っていて、

生活のほとんどを仕事に費やしていたから、

海外にいるひと時は貴重な休憩時間だったのだ。

 

 

今考えるとあの頃の旅は、勿体無いとしか言いようがない。

旅立つ前の晩は徹夜して不在中の仕事を片付け、

朝方、出発ギリギリに現地の気温を訪ねて、

スーツケースに荷物を詰めこんだ。

旅のプランは休暇の場合は元夫に、

社員旅行や仕事の場合は社員にお任せ。

飛行機の中で死んだように眠り、

現地ではただプランに従って動いた。

そんな感じだったから正直、よく覚えていない国も多い。

セラピストとなった今ならば

興味津々でじっくり滞在したいと思える、

いわゆるパワースポットと呼ばれる地にも

沢山行っていたのだ。

本当に勿体無い。

 

離婚し、仕事も辞めて、

アルゼンチン、ブエノスアイレスに住み始めて6年。

日本からみると地球の真裏、

時差12時間、季節も真逆の南米の地だ。

今のわたしは、日本に向かう飛行機で泣く。

またすぐに戻ってくることがわかっていても、

南米の地を飛行機が離れる瞬間にキュンとなる。

我慢しないで、えーんと泣く。

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「日本のことは恋しくないの?」

とアルゼンチン人からよく聞かれるが、答えは「NO」だ。

日本が嫌いとかそういうことではない。

日本はわたしの内側にあるのだ。

日本の風景も空気感も文化も伝統も、

いつでも、ここ、わたし自身の中にある気がしている。

だから乖離している気がしなくて、

日本を恋しいと思う感覚が湧かない。

 

ブエノスアイレスに住み始めた頃は、

「どうかわたしをこの国の子にしてください」

とアルゼンチン原産の木、オンブーの幹に

額をつけてお願いしていたものだが、

今は、アルゼンチンに住む日本人という自分が

最も自分らしいと感じている。

 

アルゼンチンに住む日本人のわたしは、

今年もまた日本に里帰りする。

日本に向かう飛行機の中で、きっとまた、えーんと泣く。

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アルゼンチンのエネルギッシュな大地と、

青い空に魅せられている。

力強い生命感溢れる空気が元気をくれる。

アーティストに優しい文化と、

そしてアルゼンチンタンゴの聖地であるこの街が好き。

ここに住む理由の一つは、

本場のタンゴを生活の一部として生きることが、

この街ならば容易いからでもある。

人々は愛情深く距離感が近くて、温かみがある。

通常、人々の挨拶は抱擁とキスなので、

一度それに慣れてしまうと、

その心地よさから離れることは容易ではない。

人肌恋しいという感覚を植え付けられてしまうのだ。

街歩きの楽しさもわたしを魅了している。

ブエノスアイレスの街は南米のパリといわれ、

歴史ある建築物が並び、緑と花と街角アートがそれを彩る。

 

アルゼンチンは政治経済、治安においては決して安心、

安全な国ではないけれど、

わたしの心はここにいると何か温かいものに抱かれているという感覚があって、

自由であって、そして安心していられる。

しかし残念なことに、

その感覚はこの地を離れるとふっと消えてしまうのだ。

だから日本にいる間は、

とても寒くて寂しい気持ちになる。

photographs and text - Sumiko Kuramitsu

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therapist / writer / traveler

倉光寿美子

北海道出身。東京での企業人、結婚生活を経て、

2014年離職、離婚、その年の末よりブエノスアイレス在住。

レイキティーチャー、ヒプノセラピーセラピスト。

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