


桜田香織
コーディネーター/旅行代理店/ジャーナリスト
東京出身、イタリアはシチリア島在住。
元日本航空(株)国際線乗務員。
仕事柄20代から世界を飛び回り、腰を落ち着けたのが大好きな国、イタリア。
日本の常識どころか、イタリアの常識もまかり通らないシチリア島で、
テレビ、雑誌のコーディネート、旅行業、ジャーナリズムと、何足ものワラジを履く生活。
シチリア料理とその歴史のエキスパート。

















4.12.2025
DAYS / Kaori Sakurada Column
シチリアの風に包まれて
黄色い花とアーティチョーク

シチリア在住のコラムニスト、櫻田香織です。
日本は三寒四温で、かなり温暖差の激しい3月だったようですね。
初夏を思わせるほど気温が上がって東京は桜が咲き、その翌週はグッと冷え込んだと聞いています。
体調を崩される方も多かったことでしょう。
ここシチリアでも同様、暖かかったり寒かったり、もうコスチュームプランに頭を悩ませる毎日です。
ブラウス一枚で外出できる日もありましたが、その翌日にはしっかりとダウンを着ての外出。
そういえば去年の今頃は20年振りくらいに熱を出したなぁと思い出しながら、体調には気を遣って過ごしていました。
今年はお陰様で、元気な毎日。

2月頃からですが、こちらでは黄色いお花をあちこちで見かけます。
日本でも定着しているというか、知名度が上がってきているらしい3月8日の「国際女性の日」には、街のあちこちでミモザの花を売っています。
その他雛菊のような花、クローバーの花、アカシアの花・・・。
郊外へ行けば勿論のこと、街中でも小さな空き地にびっしりと生えています。
整備されていないシチリアではならかもしれませんね(笑)。
あちこち放置されていますから。
これを書いている3月下旬、夏時間が始まりました。
毎年3月最後の週末に時間が切り替わるのですが、土曜日から日曜日になってすぐ、午前2時に1時間時間が進みます。
つまり、1:59から2時を飛び越して3時となるのです。
そして前日までは日没が午後6時半だったのが、一気に7時半に切り替わります。
去年も書いた覚えがありますが、陽が伸びるとワクワクするものですねぇ。
そして毎年この夏時間が始まると、「今年も3/4が終わってしまった」と感じます。
平穏で穏やかではありますが、あまり生産性のない日々を過ごしてしまった感があり、少々焦り気味の私。
いけない、いけない、もう少し生活習慣を見直そうと(今現在は)思っています。

そしてこの時期、アーティチョークを食べまくる日々。
12月から出回るアーティチョーク、日本語では西洋アザミと言われていますが、日本ではまだまだ馴染みがないかしら?
ここ数年の物価高で、出始めは以前と比べるとかなり高く一本1€(160円くらい)でした。
通常年が明けると下がってきますが、今年はなかなか下がらなかったなぁ。
しかし、1月下旬くらいから下がり始め、買っても良いかなと思い始め、今現在は大体0,3€。
毎回10本買って、食べ続けています。
リゾット、パスタ、フライ、オムレツ、くり抜いて詰め物をしたり・・・と、食べ方は様々。
茹でただけでも美味しいです。
一番好きな食べ方は薄くスライスして生でサラダ。
ただ、とても柔らかいアーティチョークでないとできないので、そういうものが手に入ったらラッキー、必ずサラダで山盛りいただきます。
アーテチョークの難点は、灰汁が強いことでしょうか。
切った側からレモン汁に浸けないとどんどん黒くなってしまうのです。
味は変わりませんが、見た目も大事、特に生食の場合は大切ですよね。
そしていくつかの下処理を済ませると、指先も黒くなってしまう・・・。
これが石鹸で洗ってもなかなか取れないのですよ。

私の住んでいるパレルモ郊外にCerda(チェルダ)という村があり、アーティチョークの栽培で有名です。
小さな村にしては結構な数のレストランやトラットリアがあり、シーズン中はどのお店でも「アーティチョーク尽くしのメニューが提供されます。
メニューはなく、黙って座ればどんどんとお料理が運ばれてくるのです。
一番魅力的なのは前菜の数々、次から次へと10種類くらいは並ぶのですが、これがもうどれもこれも美味しくて止まらない、ワインもどんどん進んでしまう。
その後、プリモピアットととしてパスタとリゾット、メインは3種類のお肉のグリルが定番。
地元の方でも食べきれないボリューム、なかなか最後まで辿り着けず、お肉はお持ち帰りの人も多いです。
毎年一回はこの土地を訪れて、アーティチョークを存分に楽しむのが年中行事となっています。
シーズンは12月から4月末までと結構長いのですが、それを過ぎると保存食として酢漬けにした物しか手に入らないので、現地の方々も食べまくっています。
でもナスと同様、お子さんにはあまりウケが良くないですね。
どうしてかしら?
年々冬と春の季節の変わり目が曖昧になっていて(日本もそうかもしれませんね)、三寒四温を繰り返しながらいきなり「夏」がやってくる気がします。
なので春らしい日を思い切り満喫しよう、外出しよう。
そんな事を思う今日この頃であります。


2.8.2025
DAYS / Kaori Sakurada Column
シチリアの風に包まれて
あっという間に1ヶ月が過ぎた2025年

シチリア在住の櫻田香織です。
早いですねぇ、今年もあっという間に1ヶ月が過ぎていきます。
去年のクリスマス前後、シチリアにしては珍しく1週間も悪天候が続き、大雨強風でした。
その後嘘のように晴れ渡り、穏やかな元旦を迎え、新年早々気分が良いなーと思って過ごす日々。
海際を散歩したり、日本人の友人宅でお鍋を囲んで新年会をしたり、外出が続いたものの・・・。
その後中旬には又悪天候に逆戻り。
大雨だけではなく、雹まで降りました。
もうその1週間はほとんど外出せず、お籠り状態。
テンション下がりっぱなし。

これを書いている1月下旬、一応お天気安定して、気分も安定しています。
しかし、これだけお天気によって気分が左右されるとは、私もシチリア人気質になってきたのでしょうか?
本当にここの人達はお天気に左右されるのですよ。
北ヨーロッパに住んでいたら、冬中ほとんどお日様見ることはないし、雨も多いし、いちいちお天気に左右されていたら生活できないと思います。
しかし!ここシチリアでは大雨だと平気で食事の約束がキャンセルになったりもするのですよ。
「この天気・・・、今日の夕食どうする?」
「うーん、そうだね、別の日に仕切り直そうか」などと言う電話での会話、もしくはメッセージが飛び交い、取りやめ・・・。
台風という訳ではないのにと、昔は信じられませんでしたが、今ではすっかりと慣れてしまいました。
このままでは他の土地で社会生活が送れなくなりそうで、ふと心配になることもある私。
今の所移動の予定はありませんが。

お誕生日月
お誕生日が5日違いの私と相方、今年も仲良くひとつ歳を重ねました。
それぞれ誰とどこで過ごしたいかを決めて、今年はどちらも少人数での外食を楽しみました。
もう何回一緒にお誕生日を過ごしたのかしら?
昔は私のお誕生日の朝には出かけて行って、花束を抱えて帰宅した彼ですが、もう10年くらいそんなこともありません(笑)。
そしてそれを別段気にもしていない私。
こういうことを不満に思うシチリア女性も多いのは事実ですが、私はどうでも良いと言うか、おねだりも期待もありません。
だからと言って冷めている訳でもなく、上記したようにお祝いのお食事は楽しみます。
それは恐らく、記念日のイベントよりも日々の生活に重きを置いているからかな?
穏やかに過ごせれば、それだけで幸せな気分に浸れますから。
私的には元旦よりも誕生日の方が「これから新しい一年が始まる」感が強いです。
みんな一緒の新年ではなく、私だけの新年となるからかもしれませんね。
健康で、美味しい物を美味しく感じ、お日様いっぱい浴びて元気に過ごす。
親しい友人達との時間を大切にし、ひとり時間はお絵描きをし、予定を埋めすぎることなく余白と余裕を持って生活したい。
そんなことをしみじみと考えた一月、そして実行できていると思った一月。
特別なことはないけれど、幸せなお誕生月でした。

12.5.2024
DAYS / Kaori Sakurada Column
シチリアの風に包まれて
2024年を振り返って

イタリアはシチリア島在住のコラムニスト、桜田香織です。ご無沙汰しております。
皆さん同じように感じていらっしゃると思いますが、早いもので今年ももう終わりですね。
そして今の時期2024年を振り返ったり、来年の抱負を考えたりしていらっしゃることと思います。
私もここで一つ手帳をパラパラと眺めながら、今年一年を見直してみようと思います。

2024年は「劇場へ行きたい」という思いがありました。
以前は割と頻繁に足を運んでいたのですが、ここ数年、いえいえ10年くらいは足が遠ざかっていました。
別に特に理由があったわけではないのですがね。
で、去年の今頃「来年は劇場へ行こうね」と、相方に提案していました。
結果オペラ3回、ミュージカル1回、バレエ3回行くことができました。
どれもパレルモのメインであるマッシモ劇場です。
更に今月は最後のバレエ「くるみ割り人形」が待っています、クリスマスシーズンと言えばこれですものね。
舞台自体は勿論のこと劇場の雰囲気も大好きで、足を踏み入れるといつもワクワクします。
この劇場通いは来年も続けて行きたいことのひとつです。

今年は大きな旅行はしませんでしたが、ベニス、ローマへ2回、フィレンツェと、どれも数年振りに行くことができて、暫くご無沙汰だった友人達との再会も果たせました。
シチリアには存在しないローマのクリスピーピッツァや、フィレンツェのTボーンステーキも食べることができ、それも満足。
どれもこれも母が好きだった物なので、亡き母を思い出しました。
昔母と宿泊したベニスの「ホテル・ダニエリ」、今は高過ぎて止まることは不可能なので、朝食だけ食べにいきました。
ここのホテルの朝食ブッフェは素晴らしく、テラス席で母と食べたなぁと。
フィレンツエには7年くらい住んでいたので、街はかなり変わっていたとはいえ懐かしかった。
昔住んでいたアパートへも足を運び、外から眺めてなんとなくため息。
私の長いイタリア生活の出発点でありますからね。
春から夏にかけて、来客も多い年でした。
日本の仲良しだった人達、友人の友人で初めてお目にかかる方々、イタリア以外に住む外国人の友人達、様々です。
英語を話す機会も多かったし、言葉は使わないと忘れますから、有難いと思いました。
私的に大きな出来事としては、去年の春から続けているお絵描き、7月に銀座の月光荘にて先生とお絵描き仲間とのグループ展に出品できたこと。
帰国できなくその場にいることができなかったのがとても残念ではありましたが、東京近辺在住の友人達が何人も足を運んでくれて、その数全訪問者の1割近くになりました。
縁があって5月にパレルモで知り合った日本人女性がご主人様と行ってくれ、なんと彼女も同じ先生の元お絵描きを始めたとか。
何かしらの形で誰かに影響を与えることができて、お絵描き仲間が増えたのがとても嬉しいです。
もうひとつ大きな出来事、成し遂げたこととして、これ又友人達と「レシピ本」を出版しました。
コロナ禍にできたFBでのお料理好きなグループ、ひたすら食べた物をアップするグループで誰かの美味しそうな物を目にしたら「レシピ教えて」の言葉が飛び交い、皆な気前良く差し出したことから始まり、私が「本を出しましょうよ」と提案。
最初は誰も乗ってくれなかったのですが(笑)、徐々にその気になってくれて形となりました。
自費出版だし販売をする予定はなく、私達の「卒業アルバム」的な感じです。
一般に公開していないグループで、誰かと誰かが繋がっています。
その中にはプロのイラストレーター、編集やレイアウトのプロがいて、日本の出版社を知っている人などなど、できる人ができることをやり仕上がった本です。
私もいくつかコラムを書いています。
日本在住の人達には既に届いていますが、海外在住者の手元に届くのはもう少し後になりそうで、首を長―くして待っている状態です。

2025年に向けて
今年実現できなく、来年に持ち越したことも多々あります。
ひとつはとっても行きたかったトルコ旅行、理由は色々あるのですが実現できず。
是非来年に持ち越したいと思っています。
カッパドキアで気球に乗りたいし、トルコ料理を満喫したいという思いが強い私。
西洋と東洋の交差点であるトルコ、何年も行きたい思いがあるのですが相方があまり乗り気でない・・・。
日本だったら「では私はお友達と行ってきますね」が可能だと思うのですが、ヨーロッパでそれは非常に困難。
夫婦別行動が普通に許される日本が羨ましくなるのは、こういう時かしら?
自宅で「朝ヨガ」を始めようと思っていたのに、これも意志が弱くてやったりやらなかったり・・・。
来年からと思わずに、今日この瞬間から始めた方が良さそうです(笑)。
始めたもののその後放置してしまったことに、「シチリア料理のリサーチ」があります。
以前NHKのTVイタリア語のテキストに「シチリアの歴史を食で切る」というお題目で1年間連載をいただきました。
その時にかなりシチリア料理、食材などについてリサーチしたのですが、もう少し深めたいと思っています。
色々な文化が交差し、外から持ち込まれた食材も多く、その全てが混ざりあってできたのが現在のシチリア料理。
ルーツに関してシチリア人よりも詳しいと自負している部分もあるのですが、もっと掘り下げていきたいと思っています。
本来怠け者なので、自分に課題を与えないとお勉強しないので・・・、ね。
2024年の手帳の最初のページに書いた言葉、
思って、感じて、描いて・・・
感じて、考えて、書く
2025年の手帳には
優しく、強く、面白く、
自分を大切に、しなやかに、心穏やかに
と、書きました。
師走の慌ただしい時期、どうぞ皆様お元気で良いお年をお迎えください。
そして来年もシチリアの香りをお届けできたらと思っております。
4.15.2024
DAYS / Kaori Sakurada Column
シチリアの風に包まれて
春の到来

暖かくなってきて、海際のレストランでの食事が気持ち良い
イタリアはシチリア島からのコラムニスト、桜田香織です。
カトリック圏では3月最終日曜日に復活祭を迎えました。クリスマスの次に重要な祭日であります。
復活祭は毎年変わるのですが、今年は偶然夏時間の始まりと重なり、なんとなく一気に春が訪れた感じであります。
夏時間になるといきなり日没の時間が1時間遅くなり、夜7時半頃まで明るいので、毎年のことではあるのですが、ウキウキしてしまう。
子供の頃に「暗くなる前に帰って来なさい」と、親に言われていたからかしら?
まだ外で遊んでいても良いのだわと、思ってしまう自分に笑えてしまいます。
しかし今年、復活祭の前から体調を崩してしまった私。
20年近く振りの発熱で、自分でもびっくりです。
ちょっと風邪っぽい?と思ったのですが、その翌日には熱が出てしまい、インフルエンザだったのかもしれません。
薬を飲んでベッドへ、そして夜中に2リットル分くらいの汗をかいてなんとなく復活。
しかし翌日も夕方からまた不調で・・・・。
こんなことを数日繰り返しました。火曜日から始まって土曜日には完全復活という感じで結構動けるようになったのですが、思っている以上に体力を消耗してしまっていたようで、少し動くと疲れてしまう。
歳のせいもあるのでしょうが、自分的には結構ショックでもありました。
今はすっかり元気になりましたが、約1週間パッとしない状況でしたわ。

バレエの後で。バレリーナ、その家族、一緒に行った友人達との会食。
3月の楽しかったこと
この1ヶ月を振り返ってみると、3月も劇場へ出かけ、バレエ「シンデレラ」を楽しみました。
今年に入ってから3ヶ月連続で劇場通い、今回も幸せな時間と空間を満喫しました。
しかも現在、パレルモの「マッシモ劇場」には日本人のバレリーナがいらっしゃるのです。
彼女は私の友人でもあり、と言うか最初に彼女のお母様と知り合ったのですが、何度か食事もご一緒して仲良くお付き合いしております。
そのバレリーナYさんの舞台を観るために、彼女のお母様、お祖母様、妹さんがパレルモへ遊びにいらして、彼女達とも楽しい時間を過ごすことができました。
Yさんは夜舞台のある日も昼間リハーサルがありますし、自分が踊らない日も勿論連日劇場に詰めています。
いきなりの代役・・・なんてこともありますから。
なので、ご家族の方達とは昼間遠出をしたり、沢山おしゃべりもできました。
イタリアにも沢山の友人がいますが、日本語でのおしゃべりはやはりとっても貴重な時間です。
4月にはJAL時代の大親友がご夫婦で遊びに来てくれます。
パレルモ、その後ローマとベネチアへも一緒に行く予定になっていて、これ又楽しみです。
約1週間一緒に過ごすことになっていますが、きっとそれでは時間が足りないと思うこととなるでしょう。


シチリアの海の幸
日々の楽しみ
丁度一年前帰国中のことですが、FBで見つけたお絵描き講座を受け、この3月からは上のコースを受講しています。
「絵日記アーティスト」と言うこのコースは3月から7月までの5ヶ月間、課題や宿題も多くフーフー言いながらですが、楽しんでいます。
苦手な建物や人物を描けるようになりたい、もっとサクッと描けるようになりたい。
2月に友人が東京の自由が丘にカフェをオープンしたので、そのメニューを描かせてもらいたい。
夢はどんどんと広がります。
手帳スケッチなので大きな物は描きませんが、描くようになってから物をよく観察するようになりました。
足腰立たなくなっても続けられる趣味、初めて大正解でした。
毎日隙間時間に描くこともありますし、じっくりと腰を据えて取り掛かることも。
バッグには常に小さいモレスキンのノートとベンを忍ばせ、外出中も気が向いたらペンを取ります。
私の母も水彩画をやっていたのですが、もっと早く始めていたら母とお絵描き旅行ができたなぁと、少々悔やまれます。
こればかりはもう叶わないのでね。
でもきっと空から私のスケッチを眺めていてくれると思っています。
ドラマチックなことはない毎日ですが、普通に過ごせることに感謝。
体調を崩した後は、さらにその気持ちが大きくなりました。
普通に朝起きて、普通に自分の足で歩けて、食事を美味しいと感じる。
お絵描きで日々が豊かになり、1人でいる時間も友人と過ごす時間も楽しい。
妙に幸せを感じている今日この頃です。

美味しいお絵描き
2.10.2024
DAYS / Kaori Sakurada Column
シチリアの風に包まれて
2024年の始まりは

あっという間に今年も1ヶ月が過ぎようとしている今現在、2024年初めてのコラムだ。
皆様いかがお過ごしだろうか?
コロナ以来全くなかった仕事が少し戻ってきて、1月は北イタリアとドイツに出張へ出かけた。
のんびりと料理をしたり、お絵描きをしながら過ごす日々も楽しいけれど、仕事の緊張感もなかなか良かった。
出張の後ローマで相方と合流し、3日間のプチ旅行も楽しめてしまった。
ローマへ行くのは何年振りだったか?
仕事先のホテルで、夜「ローマで食べたい物リスト」を書き出しておいた。
まずはこの時期にしか食べられない「プンタレッラのサラダ」。
これはチコリの一種で、少し苦味と歯応えのある野菜をアンチョビのドレッシングで頂く私の好物。
数年前にパレルモで見つけて購入した大喜びをしたのだが、本場のそれは別物だと実感。
冬の時期、ローマ中のお店に置いてあるはずなので、これからローマへ行かれる方は是非試してみてほしい。

プンタレッラのサラダ
パスタで言えば「カーチョ・エ・ペーペ」。
ローマで有名なのはカルボナーラやアマトリチャーナかもしれないが、私はカーチョ・エ・ペーペ、何故ならなかなか自分では上手に作れないから。
3回に一回は成功するのだが、2回はどうも・・・・、納得のいかない結果となってしまう。
メインは子羊とサルティンボッカ。
ローマの子羊は有名で、アバッキオと呼ばれている。
シンプルに炭火焼きにするのだが、確実に美味しい。
サルティンボッカは小麦粉を塗した子牛肉に生ハムとセージを乗せて一緒にソテーし、白ワインを加えて少々煮詰める。
これは我が家の食卓にも時々上がる一品だ。
でも食べられなかったので、パレルモに戻ってきてから「ローマ料理」を出すお店で食べた。
自分で作れば良いのにね(笑)。

ローマのピッツァ
そして絶対に外せないのがローマ風ピッツァ。
日本ではナポリ風の、厚みがあってフワフワ生地が主流だと思うが、私は断然薄くてクリスピーなローマ派。
シチリアでもナポリ風が主流で、ローマ風には出会えないから、この機会を逃してはいけない。
現地でタクシーの運転手さんやお巡りさんに聞きまくり、「絶対に美味しい」と言われてお店へ行ったのだが、人が食べているのを見て「こりゃダメだ」と思ってしまった。
シチリア人の相方も、「これはひどくない?」と言うので、ここでピッツァはやめておきましょう。
毎回真剣勝負の旅の途中の食事、1回外れるとかなり凹んでしまうのだが、たまたま隣に座ったアメリカ人男性とウクライナ人女性のカップルと話はじめ、結果楽しい夜になったので満足。
食事は「何を食べるか」は勿論大切であるけれど、「誰と食べるか」も同様に大切。
初対面であっても話が弾み、笑いの絶えない夜だった。
私は旅での出会いは一期一会でいいと思っているのだが、珍しく連絡先を交換した。
結果、翌日の夜もご一緒することになったのだった。
行ったことのない美術館、期間限定で空いていた美術館にも行かれ、30年近く振りにバチカン美術館へも行くことができ、ラファエッロやミケランジェロと再会を果たした。
住むには色々と問題があって大変だと言う話も耳にするが、それはシチリアも同じ。
ローマはやはりローマ、永遠の街だと思っている。
なにしろJALでフライトしていた頃、初めて到着したローマで恋に落ちた私なので、私にとってのイタリアの原点でもある。

相方からのお誕生日プレゼントは、オペラのチケット
二重のお誕生日
この一月の最後の日曜日、実は私の誕生日である。
そして、私は30年前の誕生日に日本を立ってフィレンツェに到着し、私のイタリア生活が始まったので、実は二重の意味のある誕生日。
そう、イタリア生活丸30年になったのだ。
こんなに長く暮らすことになるとは、当時は思ってもいなかった。
法律が変わって就労ビザが取れることになり(これはかなりの重労働であったが)、周りの人に恵まれて、助けられながらの日々。
一番最初にフィレンツェの移民局へ行き、「滞在許可証」を申請した時、「イタリアの銀行口座がないと出せない」と言われ、びっくりして銀行へ行ってみたら「滞在許可証がないと口座は開けられない」と言われ、夜明けから移民局に並んでいた私は疲れと絶望感で図らずも涙がポロポロとこぼれ出してしまったことを覚えている。
これが噂に聞いていたイタリアの理不尽さか!
それを見た銀行の方がオロオロとして、「泣かないで、泣かないで。僕と一緒に2階へ行こう。口座開設してあげるから」と、私の肩を抱いて2階へ連れて行ってくれた。
結果、口座開設できて、「滞在許可証が出たら、持ってきてね。」と言われて解決。
イタリア男性は女性に優しいと聞いていたが、本当だった。
女の涙に弱いと言うのも本当だった。
あの時もしも係員が女性だったら、こんなに簡単に解決しなかったのではないかと、後になって思ったっけ。
ラッキーだった。

お絵描きも細々と続けてます。ローマで食べた美味しいもの達
過去を振り返る今日この頃
こんな風に、この30年の様々な出来事が甦ってくる。
とっても楽しかったことや辛かったこと、そして沢山の方々に助けられたこと。
困って途方に暮れていると、誰かが手を差し伸べてくれた。
そう、私は周りの人に恵まれていると思う、本当に有難い。
受け取った沢山の優しさを思い出す。
パレルモでの生活はそう簡単ではなく、頭にくることも沢山あるのは事実だが、私を受けれてくれたイタリア、そして優しい人達、それを忘れずに私自身困った人に手を差し伸べることのできる人間でありたいと思う。
2022年、2023年と辛いことも沢山あったので、今年は空を飛ぶように自由に、そして笑顔で過ごそうと思っている。
12.10.2023
DAYS / Kaori Sakurada Column
シチリアの風に包まれて
11月

今年も後わずか、この時期多くの人がこの一年を振り返っているのだろう。
私の2023年は通常とはかなり違っていた。
以前も書いたが、去年の11月に4年以上振りに帰国をし、その間に母が他界したので滞在を伸ばして4月半ばまで5ヶ月も東京にいた。
そして再び相続の手続きを終わらせるために9月下旬に帰国し、2ヶ月の滞在。
今シチリアに戻ったばかりである。
つまり、一年の半分以上も東京で過ごしたということ。
こんな年はイタリアに住み始めてから始めてのことであった。
相続の件は置いておいて、今回とても楽しみにしていたことがあった。
それは「金木犀の香り」。
実は(おそらく)お花の香りの中で一番好き。
ただ開花の時期は短く9月終わりから10月半ばくらいまでの2週間ちょっとであり、最後にこの時期に帰国したのは2017年だったから、実に6年振り。
金木犀というと芳香剤を想像する人も多いらしいが、本物のお花の香りは素晴らしい。
ところが帰国して数日経っても全く匂ってこない。
実家の庭にもあるのだけど、全く咲いていない。
友人達に「金木犀はどうした?」と聞きまくったら、皆口を揃えて「そうね、今年はまだね」と、呑気な返事。
おそらく猛暑だったから、今年は開花が遅れているのかもね、何をそんなに焦っているのか?と、笑われた。
その後、近所を歩いているとどこからともなく香ってきた。
やったー!
そしてその数日後には庭の金木犀もしっかりと花が咲き、毎朝2階の窓を開けて空気の入れ替えをすると香りが飛んでくる。
これだけでどれ程幸せを感じることができたか、日本在住の方には理解できないかもしれない。
桜のように派手ではないけど、その姿を見せないことも多いけれど、香りの主張は素晴らしい。
勿論桜を愛でるのは日本人誰しもそうであると思うけれど、春の沈丁花と秋の金木犀は確実に季節を感じさせてくれると思う。

もう一つのイベントは、小学校から高校まで一緒だった友人達との同窓会に参加できたこと。
前回の帰国中の友人とのランチの時に、「十数年振りに同窓会をやろう」という話になり、その場で日程を決定。
還暦のお祝いを兼ねての同窓会。
11月なら私も参加できるかなと思っていたが、実現したのがとても嬉しかった。
アメリカ在住の人もこの日の為に帰国。
なんと48人も集まった大掛かりな会であった。
言い出しっぺグループの1人であった私はイタリアからは何も準備に加わることができなかったので、当日は早めに行って風船を膨らませたり、飾り付けのお手伝い。
近況報告では病気の話や親の介護の話も出たが、多くの友人が活躍しているのを聞いて励みになった。
これから長年の夢だったカフェを開くという人までいて、そのカフェに別の人がケーキ類を卸すなど、同級生コラボも嬉しい話。
次回は是非行かなくては。
前回の長い帰国中、体調を崩し、原因不明の足の腫れ、食中毒とあまりに色々あったので、今回はしっかりと保険をかけての帰国だったが、何もなし。
そういう物なんだろうなぁ。
何もなければ無駄だった気もしてしまうが、かけてなかったら又不調があったかもしれない。
そう、そういう物なのだろう。
今年の東京の秋はいつまでもダラダラと暑く、異常気象だった。
いきなり雨が降って気温が10度くらい下がって寒くなり、又その後20度越えという日が続いた。
シチリアへ戻るとこちらも同様、12月だというのに20度を越えていた。
通常は暖房をつけるのに、これ又変な感じである。
いつもはシチリアへ戻ると日本が恋しくなるのだが、今回は初めて「ホームに帰ってきた」という感じがしているのも不思議。
別にパスタやイタリア料理が恋しかったわけでもなく、食生活に関しては東京の方が良いと思っているけれど、「今現在はここが私の居場所」と実感した。
多分実家にはもう母がいなかったからなのかもしれない。
実家では普段兄が一人暮らしをしているわけで、彼の生活リズムを崩さないようにと、かなり気を遣っていたからかもしれない。
日本で沢山の友人達が私の帰国を待っていてくれたと同様、パレルモでも私の帰宅を待っていてくれた友人が沢山いて、バンバン連絡が入り会う予定が埋まっていく。
有難いことである。
友人は数が多ければ良いという物ではないと思っているのが、私は困った時に頼りにできる友達が多く、本当に恵まれている。
私も彼らにとってそういう存在でありたいと強く願う今日この頃。
さてさて、2023年はもう終わりに近付き、12月を楽しく過ごせれば万々歳。
良い年だったか悪い年だったかと問えば、辛いこともあったけれどそれを乗り越えたのだから良い年だったと言える。
そして2024年は更に楽しい事を増やしていきたい。
同級生達から沢山パワーをもらったし、まだまだやりたい事を実現させる時間はある。
その為に今日できることは何?と、自分に問いかけてみる。

8.5.2023
DAYS / Kaori Sakurada Column
シチリアの風に包まれて
8月 日々の生活の中で

日々の生活
6月下旬ごろに書いた前回のコラムで、「シチリアに春が来ない」とぼやいていたが、なんと7月に入ってから春を飛び越していきなり夏がやってきた。
それもかなり強烈で、すぐに40度越えの毎日。
しかもシチリアにしては湿度も高く、これ、やばいんじゃない?という感じだった。
幸い今年はクーラーが入って、リビングだけだけれども何とか暑さを凌げる状況。
そう、去年まではクーラー無しの生活だったのである。
寝室は扇風機のみ、まぁいざとなったらリビングのソファーで寝れば良いっか。
7月中旬にはイタリア半島のつま先部分、カラブリアへ1週間の旅行へ出たが、カラブリアも同じような暑さだった。ちょっと歩くだけで、と言うか歩かなくても外へ出た途端に汗だくになるほどで、そんな中考古学公園など外回りの観光も強行。
これからますます暑くなるはずだし、どうなるのかしら?と、一抹の不安がよぎる。
無事旅行を終えて帰宅しても、暑さはどんどん増していく。
もちろん日本ほどではないけれど、湿度で日没後も肌はべっとりと汗をかいた状態だった。
その後、例の奴がやってきた。
例の奴、それはアフリカからの季節風「シロッコ」である。
強風と共に砂埃まで運んで来る、かなり厄介な奴。
日本で言うと、中国の黄砂みたいな感じかな?
シロッコはとてもドライなので湿度は急激に下がるが、気温は上昇する。
何と47度まで上がったパレルモ地方。
これで湿度があったら・・・、確実に命を落としそうな勢いだ。
窓を閉め、絶対に熱風を入れてはいけないし、開けていたら砂まで入ってくるので大変なことになってしまう。
窓を開けるとどんな感じかというと、オーブンを開けた時と同じような熱風が顔を襲う。
日曜日から始まって、火曜日までの3日間続いた。
大抵シロッコは3日間なのが面白い。
初日は友人たちと出かける用事があったので外出したが、レストランのテラス席にはほぼ誰もいなく、エアコンの効いた室内に陣取っている。
それでもいまだに「クーラーは体に良くない」だという輩がいるのがシチリア。
その考え、古すぎないですかね?
月曜日は47度でとても外出できないし、エアコンつけっぱなしで、夜もそのまま就寝。
リビングだけでも付いていれば多少違うし、消したら室内の温度がどこまで上がるか考えただけでも恐ろしい。
3日目の火曜日、この日はもう大変なことになっていた。
友人一家が住んでいる山の方も大火事だと聞いたので、すぐに電話をしてみたら、前日の夜から避難命令が出ていたとか。
避難所もなく、少し下ったところにある広場で一晩過ごしたと言って、ヘトヘトの声をしていた。
夫婦と大学生の娘、そして犬2匹と一緒に避難。
風向き次第で一瞬にして全てが燃えてしまう恐怖って私には想像するしかないけれど、実際はそんなものではないだろう。
海岸線からすぐ後ろには山が連なる、ちょっと長崎に似た地形のパレルモ、火事は山を降りてかなり街まで近づいた。
毎年山火事が勃発するシチリアだけれど、こんなひどい状況は初めてだった。
水曜日になるとシロッコが収まり、20度近く気温が下がって、30度くらいになった。
何だか涼しく、そして心地よく感じる30度。
これなら普通に生活できるわ。

そんな私の最近のお気に入りの過ごし方
暑くて死にそうになってもまだ生きている私、その私がこのところ時間を費やすのが「お絵描き」だ。
帰国中の3月、偶然見つけたオンラインでの色鉛筆お絵描き講座に即申し込んだ。
もう15年くらい1日1ページの「ほぼ日手帳」を使用していて、一時はそこに食べた物のイラスト的なものを描いていた事があったのだが、放置して4年半が過ぎていた。
「描きたい」と言う気持ちはあったものの、なぜかできなかった。
この講座を目にした時、そしてその先生の絵の雰囲気が私の好きなタッチであったことから、迷わず申し込み。
この先生のやり方は、下書きなし、直接ペンで描いていく方式。
歪んでも良い、実物と違っても良い、とにかく描こう、なのだ。良いじゃない。
そもそもお題目が「大人の絵日記」と言うのも素敵だわ。
YOU TUBEで自分のペースで進む事ができ、ズームで時々みんなと顔合わせ。
週に一回のペースでFBに絵を投稿してコメントをし合う。
久し振りに描き始めたら、やっぱり難しくて手が動かないわけだが、みんなの絵にも刺激をうけて続け、3ヶ月の講習が終了。
3ヶ月で上達したかと聞かれるとそんなに簡単ではなく、まだまだ「子供のお絵描き」から抜け出せないのだが、とにかく楽しい。
そしてお絵描きを始めたことで、いくつか変わって来た事がある。
まずは物をよく観察するようになったこと。
形をとるためにも観察は必要だが、色を塗るのも難しい。
ローストポークの色はグレーに近いか、それとも茶色か?
そんなことを考えながらローストポークを食べたことはなかった。
お醤油の色だって、36色の色鉛筆からどれを選べば良いか?
何色を混ぜれば良いのか?
そして知らなかったお花の名前を知るようになったし、建物の作りもよく見るようになった。
今までだって目の前にはあったのに、気にも止めていなかった物がいかに多かったかに気が付いた。
それが何だと思う人もいるかもしれないが、私はそれで良い、楽しいから。
毎日持ち歩くことのできる、モレスキンの小さな手帳も買った。
ほとんどは写真を撮って、帰宅してからそれを見ながら描くのだけれど、バールに座って目につく物を描いた事もある。
私が再びお絵描きを始めて、意外にも喜んでくれているのが相方だ。
持ち運びに便利な24色の色鉛筆のセットをプレゼントしてくれたので、早速先日のカラブリア旅行へ持参した。
ずっと放置してあった水彩色鉛筆、水彩絵具もクローゼットの奥から引っ張り出し、全ての色鉛筆を丁寧に削ったら、何だかますます楽しくなってきた。
今の所食べ物のイラストが多いけれど、建物と人物が描けるようになりたいな。
それが出来るようになったら、実は考えているやりたい事があってね。
やりたい事が見つかったのも、お絵描きのお陰だわ。
この出会いを大切にしようと思っている。

