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DAYS

STAY SALTY ...... means column

Yoko Kaise Column

最大の喜び

from  Paris / France

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海瀬葉子
Official French Government Guide

1998年よりフランス在住。
リヨンやボルドーにも滞在経験があるが、現在はパリで通訳ガイドとして働いており、ルーヴル美術館やヴェルサイユ宮殿等案内、解説を中心に、

更にはワイン、ガストロノミーが得意分野で、各地を巡るツアーも常に企画中。

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5.2.2021

DAYS /  Yoko Kaise Column

最大の喜び

親愛なるマダム・セーヌへ

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フランスに住みだしてかれこれ20年以上、パリ12区の現在の場所に住み始めて早くも6年経った。

基本的には普通の生活を送っているが、ガイドという仕事は不規則で、しかも常に気を引き締めていないといけなく、またパリという街自体がある種の緊張感の漂う場所であることは改めて言うまでもない。

 

2003年まではボルドーに住んでいた。ほんの5年間ではあったが、また、パリに比べればのんびりしていたが、それなりに生活は充実していた。

友達はスポーツクラブに通っていた時に知り合った人が多く、そのうち数人とは今でも時々やり取りをしている。

 

ボルドーでは日本に住んでいた時は殆んど行ったことのなかった海によく行くようになった。

ガイドブックを見て一度行ったラカノーの海に心惹かれるものがあり、また自分にとても合っていると感じたからである。

 

週末は一人の時は早朝バスで一時間かけてラカノーの砂浜で午前中いっぱいゆっくりと読書したり、海をぼんやりと眺めたり、時にはうとうとと半分寝てしまったり、必ず最後に散歩をするのも楽しみであった。

ラカノーは小さな町で、中心部にレストラン、カフェ、ミニスーパーと後は土産物屋が数軒あるだけだったけれどそれらをひやかすのも楽しく、また地元の人達と会話をする事もあったが、当時私はよく日焼けしていたので「サワディカー」と声をかけられた。

 

友人達と出かける時は大抵車だったので、それも楽しかった。早起きしなくて済んだし、サンドウィッチやフルーツを持ってピクニック気分で最高だったし、時には頑張ってカリフォルニアロールを作って持っていく事もあった。

浜辺で食べると実際よりとっても美味しく感じた。

 

パリに引っ越してからは生活的には 安定して忙しかったけれど海はなかった。

パリ・プラージュというタイトルで、セーヌ川沿いの一部を砂浜のようにし、デッキ・チェアやドリンク・スタンド等が用意されていて、仕事の都合などでシーズンの間パリ残留を余儀なくされる人達にもヴァケーションの雰囲気を楽しんでもらおうというアイディアのものもあった。

私は南のモンペリエの観光局で一ヶ月の研修をした事もあり、その時思う存分パラヴァスやグランド・モット等、さらにはもっとスペインよりのコリウールの海(アーティストにも愛された町で、私個人的にもお気に入りでオススメ)をすでに満喫していたのでパリ・プラージュでは物足りない。

それが私のパリ生活での最大の不満であった。

「ヴァケーション気分を味わうにはパリを脱出するしかないのかなあ。」と真剣に考え始めた。

 

 それでも段々と私のパリ生活は様々な発見のおかげで、特にセーヌ川の存在を利用して、遠くまでいかなくても、あまりお金を使わなくても休暇気分を味わえる様に改善されていった。

ストレスもたまり始め、とにかく無理をしないで生活をもう少し楽しむことを考えなくてはいけないと気づき始めた矢先であった。

 

まずは市営プール再発見、パリ市内には39ヶ所ほどあるのだが、それまで行ったところはイマイチ楽しめる感じではなかった。

皆むしろ真剣に泳ぐといった感じ。

ところがセーヌ川に浮かんでいる<ジョゼフィーヌ・ベッカー>という名のプールはガラス張り部分の多い船で、また天井がオープンする時はサンサンと輝く太陽の光を直接浴びながら泳いだり、デッキに出て日光浴したりと、これならボルドー時代の海気分で、しかも自宅から10分内で着ける。

サウナ、ハマム、ジャクジーもあってアクアジム、フィットネスクラブもあるが市営なので料金もかなり安い。

申し訳ないが多少のお金でこんなに楽しめるのなら無料のパリ・プラージュよりも使える。

 

また、その近くには学生食堂の船があって、まだ利用した事はないが、セーヌ川眺めながらの食事なんて、それだけでもサーヴィス料払うのに値すると思う。

 

パリというところは高いお金で贅沢しても良いし、また少々の予算で自分なりの最高の時を過ごす事も可能であると言い切れる。

特にセーヌ川は立って見ているだけでも良いので、是非その素晴らしさに一度は触れて欲しい。

 

 更に違う楽しみ方も思い出した。

ブキニストという、川沿いに深緑のボックスのスタンドを利用して古本を売る人達がいるが、これは昔からあるパリ名物のうちの一つである。

今でも数はかなり少なくなったもののセーヌ川を背景にしてパリならの雰囲気をさらに盛り上げるならこれだ。

販売されているのはおおかた古本、ポスター、ポストカードなどで、そぞろ歩きしながらお気に入りを探すというのもいいのではないか。

 

****

 

コロナ感染予防対策でフランスが去年の春に一度目のロックダウンを課せられた時は今思えば非常に辛く、近所の公園さえも閉鎖されてしまった時は絶望感の塊であった。

しかしながら、私の場合はギリギリでセーヌ川が見えるところが家から1kmだったのでどれだけ救われたことか。

連日見に行っても飽きなかった。

 

また、これは友人から聞いた話しだが、ロックダウン中のある日セーヌ川のほとりのベンチに腰掛けて一杯のシャンパーニュを飲んでいた中年の男性を見たと。

彼は時間を気にしながらも、それでも景色を楽しんでいた様子で、やはりパリジャンにとってセーヌ川はかけがえの無い存在なのであろう。

シャンパーニュというところがまたフランス人らしいなと思った。

 

セーヌ川の水源はブルゴーニュ地方。

パリを横断して、最後はノルマンディー地方のル・アヴルと言う港町で海に注いでいる。

フランスで3番目に長い。

そんな偉大なるセーヌ川だが私にとっても今やなくてはならない家族の様な存在なのである。

親しみやすくて頼りがいのある、これからもお世話にならなくては。

 

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